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08.30
「おお、メイド喫茶ー! 入ろうよー!」
「アリス、あなたは本場のメイド喫茶で働いているじゃない。」
「学校のメイド喫茶という雰囲気も味わいたいの!」
「さんせーい! いこいこ!」
 完全に楓とアリスのペースになって文化祭を回っていた。私と恭花さんは後ろからついていくように歩いている。
「ごめんなさい。なんかこんな感じになっちゃって。」
「誰も謝ることないよ。楽しんでもらえるのがすごく嬉しいからね。むしろ私もちょっぴりウキウキしているし。」
「たしかに楽しいですよね。」
 私たちはメイド喫茶に入っていった。そして可愛い女子たちがお辞儀をして挨拶をしていた。
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
「かっわーいい!!」
「うん……。」
 楓はとても嬉しそうな顔で入っているが、どこかアリスは不思議そうな顔で眺めていた。いったい何を考えているのだろうか。
「こちらへどうぞ。」
「違う違う! お手本見せるから見ていて。」
「アリス!?」
 とつぜんアリスが立ち上がって二人のメイドの前に立った。そして深呼吸した後にものすごい笑顔に変わった。
「お帰りなさいませ、ご主人様っ!」
「か、かわいい!」
「すごい!!」
 二人のメイドが拍手しながら挨拶していた。めちゃくちゃ上手い。さすが本場のメイドさんというべきだろうか。
「…あれ? ありるさんですか!?」
 あ、気づかれてしまった。それの声と同時に多くの人たちがありるという存在に気づいていった。
「す、すごい! 本物よ!!」
 女子たちが声を出し合ってキャーキャー言っている。ものすごい人気者なんだなぁ…。なんというか…こういう人が入ってきてくれて嬉しい。
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08.30
「こんにちは。」
「撫子、こんにちは。」
 昼休みの間、俺は撫子の後ろにつくように歩きながら購買の所まで移動していった。その途中で姫宮さんと出会い、挨拶をした。しかし撫子が挨拶をするとピタリと止まって振り返った。
「あの…姫宮さん。」
「なんですか?」
 撫子は姫宮さんに声をかけて止めた。そして近づいていく。
「すこしこっち側来てくれますか?」
「いいですよ。」
「拓斗は大丈夫だよ。」
 俺は撫子についていくように窓側の方へと歩いていく。そして聞かれそうな気配が無いことを確認すると撫子が厳しい表情で姫宮さんの顔を見た。
「もしかして…黒服のボディーガードをお願いしたのって姫宮さん?」
「……知っていたの?」
「いえ、ただの勘です。もう一つの黒服は私の友達のボディーガードです。この学校の生徒ではないですが。」
「もしかして…カラオケ大会にいたあの金髪の外国人?」
「そうです。ヴィクトリアって子です。でも…これがバレた場合…大変ですよ。私もあの子になるべく手出ししすぎないように頼んでいるのですが…。姫宮さんの身のことを考えて言っているのです。」
 姫宮さんは大きくため息をついて空を眺めた。その顔はどことなく悲しげなものだった。
「わかっている…でもこれ以上問題は起こしたくないの。生徒会長という仕事だから…というのも変なのかな。この学校を守りたいって気持ちがあって。」
「その気持ちには私も賛成です。でも…守っているのは一人だけじゃないですよ。私たちがいますから。」
「そうね、ありがとう。でもこれだけはやらせて。」
「わかりました…。」
 撫子と姫宮さんはお互い分かり合って去っていった。こういうことも…あるんだな。

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08.30
卜部「(二三塁のチャンス…。これ以上に良い場面はそうないだろう。少ないチャンスをどうやってモノにするか…やってやる。)」
 卜部先輩はゆっくりとバットを振っていき、もう一度握りなおすとバッターボックスに入った。相手投手の松本も集中し始めた。松本の集中力というのもかなりなものだ。この場面はお互いにとってターニングポイントになってきそうだ。
松本「(打たせるわけにはいかないな。とりあえず…この一点を死守しなければ!)」
 シューーーバシーン! ストライクワン!
芦毛「(やるじゃねえか松本。この場になっても動じないか。)」
卜部「(さすがの球だな。振っていかなければ。)」
 シューー ブン バシーン! ストライクツー!
松本「(何故だ? 何故当たらない。コースはさっきと同じはず。)」
大嶺「(やっぱり錯覚してるな。これなら簡単に抑えられる。)」
 相手投手の松本がテンポよく投げてくる。この勢いのままだと簡単にアウトになってしまう。卜部先輩、粘って!
 シューーー グッ
卜部「(くそっ!)」
 ブン バシーン!
 ストライクバッターアウト!
松本「(まず一つ…!)」
 卜部先輩が空振り三振で終わってしまった。あのSFFはものすごく厄介だ。ツーアウトになってランナーは変わらず、府中先輩に託すしかない。
卜部「すまない。」
府中「アイツは本物だ。…だが俺も負けてられないからな。」
卜部「頼むぜ。」
 府中先輩は今まで二打席は右打席に入っていたのを左打席に変えた。これは…何か流れを変えるための作戦なのだろうか。
府中「(さあ勝負だ、松本。)」
松本「(こいつは本当に戦いにくい。…だが俺が抑えてやる。)」
 二人からものすごい集中力を見せていた。一球で何かが決まってしまいそうな。それぐらいの意気込みだった。
大嶺「(これで…!)」
 松本投手がサインにうなづき、足をあげる。踏み込んだ足と後ろ足で蹴り上げる。
松本「らあ!」
 シューーー グッ
府中「(こいつだ!)」
 ギィイイイン!!!
大嶺「ライト!!」
岡村「伸びやがる!」
 快音残して打球はライト方向へと飛んでいく。ライトが必死になって走っていく。ランナーはすでにツーアウトで走っている。抜ければ逆転!
海鳳「抜けろ!!」
岡村「らああ!!」
 バシン ズザザザザザ
 アウトー!!!
松本「ナイスキャッチ!!」
 ライトの岡村がダイビングキャッチでボールを捕球した。ファインプレーになってしまった。これでスリーアウトチェンジ、二者残塁で一点を取ることができなかった。

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08.28
 バシーン! ストライクバッターアウト!
 シューーー ギィン!
湯子「セカンド!」
巴美羽「おっと。」
 巴美羽が余所見をしながらキャッチする。そして軽く送球する。
 バシン! アウト!
 湯子がいつもの投球を取り戻しつつあった。たしかにこの投げ方を教えてくれた巴美羽に声をかけられたら立ち直るに違いない。だとしても相手はアメリカ。簡単に終わってくれるわけがない。
湯子「っしゃあ!」
 バシーン! ストライクワン!
夕菜「ナイスピッチング! 気合入っているよ!」
 周りのモチベーションも上がってきた。私もこの声援にこたえたい。なんとかして助けてあげたい。
 ギィン!
湯子「由紀!」
 打球はフワフワとショートの後ろ辺りへの小フライ。飛びつけば…届くはず!
由紀「っと!」
 バシン! ズザザザザ
 アウト!
由紀「っし!」
みちる「ナイスキャッチです!」
衣世「やっるう!」
 私のダイビングキャッチでスリーアウトチェンジにすることができた。私は仲間たちにハイタッチされながらベンチの中へと戻っていった。
湯子「ありがとう、助かったよ。」
由紀「いいのいいの。それより巴美羽にお礼を言うといいと思う。」
巴美羽「そんなのいらないよ。それよりさっさと点とって試合おしまいにしようぜ。」
 私はこの回の先頭バッター。すぐに準備していかなければ…。
夕菜「相当速いよ。気をつけてね。」
由紀「ありがとう。」
 私はバッティンググローブをはめて準備を始めていった。
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08.28
「見て! わたあめ! これいいよね!」
 アリスは売店を指差してピョンピョン跳ねていた。そのかわいらしい姿は誰が見たってアイドルと分かってしまうぐらいだった。もしこの中にメイドに詳しい人がいたら…きっとアリス…ありるのことを知っている人は驚くだろう。
「せっかくだから何か食べていこうよ。」
 楓は嬉しそうに私の肩を叩いた。そして手をつかんでわたあめの店の前に移動した。
「いらっしゃい!」
「わたあめ…普通のを一つ!」
「私はイチゴ味で!」
 楓とアリスはすぐに注文していった。なんてテンションが高いのだろうか。私、これについていけるのだろうか。今日だけでものすごく疲れてしまう気がする。
「いらっしゃい。って恭花さんじゃないですか。」
「どうもー。私も普通のタイプをお願いね。」
「了解です! そちらのお客さんは?」
 私の方を向いて何を頼むか聞かれた。どうしよう、いきなりだから味を決めていなかった。そもそも買うことを考えていなかった。えっと…何があるかな…。
「そ、それじゃあ…この黒糖で。」
 私は皆と違う種類のわたあめを頼んだ。お金をそれぞれ払い、そして出来上がったものを手に取ると皆はすぐに食べ始めていた。
「上手いね!」
「おいしーい!」
 私もその勢いに任せるように小さい口で食べた。…美味しい。何か不思議な感じだ。いつものわたあめとは全然違う。こういうのも文化祭ならではの経験なのだろうか。やっぱり…盛り上がり方が違う…!
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08.28
 俺は授業中、撫子のことをどうすれば良いのかずっと考えていた。デートもしたいが、それによって変なことに巻き込まれたくないのも事実。だが期待を裏切るわけにはいかない。デートはなんとしても成功させなければ。
「……ん?」
 俺は外にある人だかりがあるのを見つけた。それは俺たちの学校をじっと見つめているあの人たちだった。あの橋の下にいたやつら…なんでここまできて眺めているんだ? 学校外だが少々怖い。何か起こらないといいけど…。しかしそんなこと考えていると先生たちがあの集まりに寄ってきた。これで帰ってくれるだろうか。と思ったら一人の男子が柵を乗り越えてきた。おいおいマジかよ!?
「ちょっと…ヤバイんじゃないか?」
 俺は思わず声を出してしまった。それに反応した生徒は外を見た。そして一人、一人と気づいていく。一人の生徒が先生をにらみつけながら近づいていった。しかしそれを確認したのだろうか、左右から二名ずつの黒服男がやってきた。それに気づいた不良グループらしき人は逃げていった。さすが黒服…ってことはまさかヴィクトリアのボディーガートたちか!?
「なんだあの黒服は。すげえ。」
「拓斗…。」
 多くの人が驚いている中、撫子が俺の肩をちょんちょんとつついて呼んだ。俺は撫子の方を向くと撫子が耳に手をあててこっそりとしゃべった。
「片方、右側から来た人たちなんだけどヴィクトリアのボディーガードじゃない人がいた。」
「えっ!?」
「服の種類が違ったから。」
 そうだったのか!? だとしたら…向こうの黒服は何なんだ…。どこの人たちなのだろうか…。
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08.28
芦毛「っし! しゃあ!」
 芦毛先輩はファーストベースに到着するとガッツポーズをとって声を上げた。この大きなチャンスに九番の沖田の出番がやってきた。
新天「沖田! 頑張れよ!」
米倉「チャンスだぞ! 意地をみせてやれ!」
 いままで一緒のチームだった新天と米倉が応援する。たしかにいままで一緒に戦ってきた仲間がこういうチャンスがめぐってきたのだから応援しないわけがない。
日下部「(ここは最高の武器であるバントで決めてこい。)」
沖田「(っしゃ。本当に最高だぜ。甲子園でしっかりと仕事をこなせるということが嬉しいぜ。最高のバントを決めてやる!)」
松本「(バントあるか? いや、塁に出たとしても後続を抑えれば良いことだ!)」
大嶺「(低めにこい。ここだ!)」
 相手投手はランナーを気にしながら足を上げて投げた。
沖田「(初球から!)」
 コツン
卜部「よし、上手い!!」
 沖田の絶妙なバントは一塁線へと転がっていった。サードセカンドは確実にセーフになるだろう。松本投手がようやく追いついてファーストに投げる。
 バシン! アウト!
「ナイスバント!!」
 球場の応援の方から大きな拍手が送られた。沖田は自分の仕事をしっかりと果たせて笑顔になっていた。
卜部「よっしゃ!」
ウグイス嬢「一番、セカンド、卜部君。」
 このビックチャンスに三年生の卜部先輩がバッターボックスに入っていった。ワンアウト二三塁、ワンヒットで逆転できる場面まで回ってきた。
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08.27
「それじゃあ日曜日によろしくね。」
「あー一っ! 相談があるんだけどいいかな?」
 会議が終わろうとしていたとき、アリスが突然大きな声で話しかけてきた。何を言い出すのだろうか。
「えっとね、それだったら一つ。もしできるなら一緒に土曜日は恭花さんの文化祭を楽しみたいと思っているんだけど…どうかな!」
 一瞬静まり返ったが、すぐに拍手が聞こえてきた。
「それいいね!」
「私も一緒に見に行きたいね。恭花さん、大丈夫でしょうか?」
「私はもちろん大丈夫よ。」
 私たちはライブをする前に恭花さんの学校の文化祭を楽しむことになった。別の学校の文化祭…どんな感じなのだろうか。
「それじゃあ…10時に集合ってことでどうかしら。」
「もっちろん!」

「すっごーい!!」
 文化祭ライブ前日、私たちは恭花さんの学校にお邪魔して文化祭を楽しむことになった。恭花さんの学校は都立だがとても豪華だった。そして盛り上がり方がすごい。
「さあ!! こっちにいらっしゃい! 美味しい喫茶店はどうですか!」
「こっちはアイスクリームだよ!」
 その盛り上がり方はとてもすごかった。文化祭というレベルではない、どこかの大きな祭りとかと比べても良いぐらいなほどの盛り上がり方だった。こんなたくさん人がいる中で…ライブをするのか…。すごく楽しみになってきた…!
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08.27
「おはよう。」
「おはよう拓斗。」
 学校に到着すると生田の姿がいた。包帯を巻きながらも元気そうな姿がそこには見えていた。俺は手を振ると生田も手を振ってくれた。
「そういえば見たか? あの下にいた人たち。」
 生田は俺が話そうとしていたことを先に話してきた。生田も気づいていたようだった。
「やっぱりか…。何考えているんだろうな。」
「おそらく今日も襲いにいこうとしてたんだと思うぞ。だけどあの人数だったからさすがにやらなかったのだろう。今日こっちの校長が向こうの校長と話すらしいから何か落ち着いてくれそうだぜ。」
 そうなのか。校長先生が向こうの校長先生とお話するということはおそらく生徒は止められるだろう。しかしまだ心配なことがある。卒業生が絡んできたり、別の人たちが絡んでくる可能性がある。その可能性が一番怖い…。
「どうしたんだ拓斗、何考えているんだ?」
「いや、なんでもない。」
「何かあったら言えよ。この学校皆が味方なんだから。」
 それもそうだよな。味方なんだよな。……果たしてそうだろうか。その心配も少しあったんだ。クラスの皆は誰にでもそんなことはありえない。しかし別のクラス、学年はどうだろうか。9割の仲間は助けてくれるが1割は…そんな嫌な気がする。勘かもしれないが…そんな気が…。
「はよー。皆そろっているみたいだね。」
 藤浪と磯見もやってきた。クラスの皆は全員元気にやってきたみたいだった。まず一安心ができた。

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08.27
 バシーン! ストライクバッターアウト!
芦毛「っし。」
 芦毛先輩はすぐに立て直して後続を抑えていった。しかしここで一点が入ってしまった。松本投手から最低でも二点取らなければ勝つことはできない。しかもまた追加点が入ってしまう可能性もある。早く点を取っていかなければ。こっちは七番の栗山の出番がやってきた。下位打線だが狙えるチャンスはある。ここでまずヒットを打たなければ。
栗山「(ここからなんとかつなげていかなければ…!)」
松本「(下位打線か…だとしても気は抜けねえ。アイツの学校だからな! 雨も強くなってきたから速めに片付けなければ!)」
 シューーー バシン!
 ボールワン!
栗山「(俺の足なら…これで勝負だ!)」
 シューーー
卜部「セーフティー!」
 ギン
大嶺「サード! 突っ込んで捕れ!」
 突然のバントにサードが勢いよくダッシュした。栗山先輩のバントは上手く決まり、スタートダッシュも綺麗に切れた。しかし守備が堅いのか、すぐに捕ってファーストに投げる。
加藤「ファースト!」
栗山「っらあ!」
 栗山先輩が必死に走る。そしてファーストベースに向かってヘッドスライディングする。
 バシン! セーフ!
栗山「よっしゃ!」
府中「ナイスバント!」
 栗山先輩のセーフティーバントが決まった。これでノーアウトランナー一塁。八番バッターの芦毛先輩が入っていった。
松本「(ヒット打たれたか…だがここで終わりはしないさ!)」
 相手投手も諦めてはいなかった。しかし芦毛先輩だって諦めていない。ここまできたのだから芦毛先輩だって諦めていないはず。ここでヒットを打つかどうかでも大きく変わってくる。芦毛先輩、頑張って!
松本「(俺は…お前に勝つためにここまでやってきたんだ!)」
芦毛「(俺だって…負けるわけにはいかないんだ!)」
 シューーー ギィイン!
 バチン!
松本「ちっ!」
海鳳「抜けた!!」
 打球はピッチャーのグローブの先をはじき、勢いを殺されたがそのままセンター前へと転がっていった。芦毛先輩のヒットでノーアウト一二塁、チャンスが広がっていった。

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08.26
由紀「ドンマイドンマイ!」
 私はすぐに湯子に声をかけた。湯子も何か吹っ切れたかのように大きくため息をついて私の方をむいた。
湯子「大丈夫、頑張って投げるから一つずつとっていこう!」
 湯子の元気な声が聞こえてきた。だけど…顔付きが全くもって違った。あの時の私と一緒だ。両親が亡くなった時と…同じ絶望感あふれる顔になっていた。私は言葉を失った。何を言えば良い。これ以上声をかけても何も届かないのではないのだろうか。逆に嫌な思いをさせてしまうのではないのだろうか。
みちる「大丈夫です! 湯子先輩ならあとも抑えられます!」
 みちるも声をかけるが全く変わる様子がない。夕菜も声をかけているがダメ、衣世にいたっては声をかけることすらためらっていた。
巴美羽「打たれるときもあるよ! だとしても投げなきゃいけないのはピッチャーでしょ!」
由紀「巴美羽…?」
 巴美羽が突然声を出した。それに湯子はハッと反応した。
湯子「巴美羽。」
巴美羽「打たれたことはしゃーない。さー次抑えていこー!」
 巴美羽が珍しく声を出している。なんでこういうときに限ってすごく頼りになる言葉をかけてくれるのだろうか。それを聞いた湯子も落ち着きを取り戻しつつある。湯子はもう一度深呼吸してバッターの方を向いた。四番バッターがそこにはいた。そして湯子は勢い欲投げる。
 シューーー バシーン!
 ストライクワン!
 序盤のような勢いが…戻ってきた…!?
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08.26
「さてと…皆電話出れてる?」
「だいじょーぶ!」
「聞こえるよ。」
「電波はジャックされて無い…よしオッケー!」
 私たちはパソコンの前に座って無料通話会議を始めた。これから行われる文化祭のライブについて会議することになった。私たち個人で動くライブは初だ。だからこそしっかり計画をたてて決めていかなければ。とりあえず、一番近くにある恭花さんのライブについて語ることにしよう。
「それじゃあ…恭花さん。一番近いライブが恭花さんの学校なのでその連絡についてお願いします。」
「分かりました。えっとですね、まずこのファイルを受け取ってください。」
 その声と同時にメモ帳の連絡が飛んできた。私はそのファイルをダウンロードすると予定が書かれたメモがやってきた。
「見えた?」
「大丈夫です。」
 私たちが受け取ったことを確認すると恭花さんは説明し始めた。
「それじゃあ内容ね。私たちの文化祭では日曜日の午後1時から外部からのイベントが始まるの。そのトップバッターが私たちになりました。曲は三つ。収録したときの二曲とデビュー曲でいこうと思うよ。収録したときの二曲は初のダンスを見せることになるけど頑張っていこう。いままで何度か通して練習したから体力に関しては大丈夫だと思うよ。」
 私たちはうんうんとうなづきながら話を聞いていた。確かに初のこともある。だからしっかりとやっていかないと。
「質問があります! 衣装も新しいものを使いますか?」
 楓が良い質問をしてくれた。たしかに普通に考えたら新しいものだよね。
「そうだね。新しい衣装を使ってみようと思う。千代乃ちゃん、出来ている?」
「この前の衣装合わせの後、すこし装飾をアレンジしただけだから大丈夫です。」
 それを聞くと何故か分からないけど拍手が沸き起こった。何でだろう…でもライブのためにやれたことがこうやって喜んでいただけて嬉しい。
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08.26
「おはよう。」
「拓斗おはよう。ちょっとまってね。」
 俺は撫子の家の前で靴を履く撫子を待っていた。学校に行くためにこんな朝早く起きるのは始めてかもしれない。とにかく撫子のためだから起きれたけど…さすがに眠いか。
「拓斗眠そうだね。」
「ああ…。でも学校はあと三日で終わりだから頑張るよ。」
 終業式は三日後、それもクリスマスイブだ。少し心配だけどデートだけはしっかりとやりたい。俺と撫子の約束だから…。
「ねえ拓斗。天気予報見た? 週間予報でクリスマスは雪が降るって! しかも大雪じゃなくてパラパラと降るみたいだから綺麗なクリスマスになりそうだね。」
「そうだったのか! そりゃいいな! クリスマスプレゼントも楽しみにしてくれよ。」
「ありがとう! もう用意とかしてくれたんだ。ありがとうね。」
 俺と撫子は笑いながら道を歩いていた。集団で歩いている生徒を見かけると俺と撫子はなるべくその近くに移動した。学校の連絡でそういう風に決まったから仕方の無いことだけど、これだけ人がいるとさすがに襲ってくることは無いだろう。
「ねえ…拓斗。アレって…?」
 俺は撫子が向いている方を見た。そこには影に隠れている何人かの人を見つけた。もしかして…アレが例の人たちなのか!? だけど…襲ってくる様子は見られない。きっと警戒されていることを感じ取って無理に襲いに行こうとしてないのだろう。
「大丈夫、撫子。集団登校だから無理に襲ってきたりしないよ。」
「そうだよね…。拓斗…気をつけてね。」
「大丈夫だよ、俺は撫子を守るからさ。」
「ありがと…。」
 俺は撫子の頭を撫でて落ち着かせた。しかもその撫でたおかげで撫子は赤面した。なんてかわいいのだろうか。
「ごめん…ここじゃ恥ずかしい。」
「すまん。」
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08.26
 バシーン! ボールワン!
 霧雨が収まらない中、六回の表に入った。この回は八番の香川からの打順になっていた。芦毛先輩は疲れの様子を見せずにどんどん投げている。しかしこの雨の中、コントロールは少しずれてきていた。
 バシーン! ボールツー!
 ここまでツーストライクと追い込んでいるが二球続けてボール球を投げていた。この雨の中はけっこう厳しいのだろうか。
 シュルルルル ブン バシーン!
 ストライクバッターアウト!
芦毛「っし!」
 しかしここで空振り三振をとった。これでワンアウト。芦毛先輩のピッチングはさえていた。圧倒的な力を見せて抑えていた。そして九番の安川がバッターボックスに入る。
安川「(くそ、なんとかして松本を助けてやりたい。一点でも入れればあいつのモチベーションは上がるんだ。)」
 バッターは気合入れてバッターボックスに入った。しかし逆に言えば気合が入りすぎている可能性もある。そういう所から三振を狙うのは良い方法だと思う。芦毛先輩も分かっているはず。大きく振りかぶり、投げる体制に入る。
 シューーー
安川「(簡単に終わってたまるか!)」
 ギィイイイン!!!
芦毛「えっ?」
安川「えっ。」
府中「ライト!!! バックだバック!」
 打球がグングンと伸びていく。まさか…こんな所で!? 中山も必死に追っている。目線を切って走っていくが、フェンスに手をついた。そして…。
 ポーン
安川「っしゃああ!!」
卜部「嘘だろっ!?」
 ホームラン。予想もしていなかったことが起こってしまった。まさかこんな所でホームランが出るなんて。普通じゃありえない。あんな体格で…ホームランを打たれるなんて…。
安川「やった、やった!」
松本「ナイスバッティング!」
大嶺「よっしゃ、これで勝てるぞ!!」
芦毛「嘘だろ…。」
 あまりにも完璧すぎて何も言葉が出ない。先取点が思わぬ形でとられてしまった。
府中「ドンマイドンマイ! 次抑えていこう!」
芦毛「ありがとう。切り替えていくよ!」
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08.25
湯子「(おちついて…私ならしっかり投げられる。)」
 湯子は一生懸命落ち着かせようとしている。だけど遠くからみて緊張がまるで丸見えだ。このままだとまずい。何とか声をかけたいけど…タイムを取るようなことにならないと行けない。とにかく遠くからでも声かけないと。
由紀「落ち着いて! 後ろには私たちがいるから! 点差余裕あるから気持ち切り替えていこう!」
 私が声をかけると私の方に湯子が顔を向けてくれた。だけど…気力あふれる顔ではなく、焦り一色の顔つきになっている。だめだ、届いていない。このままだと確実にしとめられる。
巴美羽「自信もてー。大丈夫だよー。」
 巴美羽が声をかけてくれた。しかし声をかけてるというにはなんともいえない格好だった。しかしそれでもあの投げ方を教えたのは巴美羽だ。その巴美羽を見て少しは落ち着きを取り戻したようだった。さて…この三番バッターを抑えるかどうかがカギになってきそうだ。
 シューーー バシン!
 ストライクワン!
 ストレートが綺麗に決まる。よし、初回のような勢いが戻ってきている。これなら…。
 シューーー ギィイイイン!
湯子「あっ。」
夕菜「レフトバックだバック!」
 私は思いっきり後ろに走った。ヤバい、この打球は相当伸びる。フェンスが見える。このままだと…。
 ポーン!
「イエーーイ!!」
 ホームラン。一瞬にして逆転されてしまった。それも一番最悪な形で…。アメリカのチームはなんて…力強いのだろうか。
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08.25
「今回収録してみてどうだった?」
「正直難しかったです。今回みたいに体力も厳しい感じになりそうだし、これからも努力していかないと…。」
 私は紅音さんとお話しながら帰宅していった。楓や恭花さん、アリスもアイリングのメンバーとお話している。でもこんなに優しくしてくれる理由というのは何故なのだろうか。私たちに何かあるのだろうか。
「どうしたの? 何か考えているけど。」
 私は深く考えすぎて回りが見えなくなっていた。私はハッと気がつき紅音さんの方を向いた。
「ごめんなさい。ちょっと考え事が。」
「考え事?」
「なんで紅音さんは私のことをこんなに優しくしてくれるのかなって。」
 紅音さんはうんうんとうなづくと私の肩をポンポンと叩いた。
「それはあの時の出来事が嬉しかったからよ。だって千代乃は私にアイドルになりたいって言ったよね。それも私たちのライブを見て。」
 何も迷うことなく紅音さんは答えていく。その姿がいつものライブの時よりも輝いて見えていた。
「それはとても嬉しいことなのよ。だから私はそれに答えようと思ってサポートしてるの。千代乃の言葉はとても嬉しかったのよ。」
「そうだったんですね…ありがとうございます。」
「いえいえ、お礼を言うのはこっちの方よ。」
 紅音さんは笑ってもう一度肩をポンと叩いた。
「頑張って。」
「はい、頑張ります!」
 私はその言葉で今日の疲れが吹っ飛んでしまうような気分になった。これからも…アイドルを頑張ってみようと思う。
「私たちもついているからね!」
「いつまでも私たちは仲間だよ!」
「そう、何かあったら私たちが助ける。」
「それがメンバーだもの!」
 皆が声をかけてくれる。すごく嬉しくてたまらない。だから…この人たちとずっと一緒に…。
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08.25
「迎えにきたぞ。」
 俺たちは生田のいる病院に到着した。そこには生田の両親と弟、妹の姿が見えていた。
「こんにちは…。話は聞きました。あなたが…白羽根拓斗君ですね。それと…目黒美幸さんですね。」
「どうもです。」
 俺はお辞儀をして挨拶した。すると目黒は一歩前にでて生田の両親に声をかけた。
「あ、あの。」
「こんな彼氏ですみませんね。」
「いや、そんなことは…! えっと…学とすこしお話させていただいてもいいですか?」
「ええ、もちろん。」
 目黒は生田の元に歩いて近づいていった。生田はベットに座る体勢に変わって目黒の頭を撫でていた。
「ごめんな、心配をかけて。」
「大丈夫…。速く元気になってね。クリスマスデート楽しみにしてるから。」
「そうだな。俺もそれまでにこのキズとかいろいろ治しておくからな。」
 二人の元気な姿はすぐに俺も見たい。早く元気になって楽しく過ごしたい。学校には明日からやってくるけど…このキズだもんな。無理はさせられない。俺も何か手伝えることは手伝うか。
「この後は私たちが送りますので。」
「そうですね…家族がいるのならそちらの方が良いでしょう。」
 俺たちは挨拶をすると病室から出て帰宅の準備をした。全員の家の前までヴィクトリアの車で送ることになった。いつになったら安全に帰宅することができるようになるのだろうか…。

「それじゃあまた明日ね。」
「おれもここで降りていくよ。撫子の家からは目と鼻の先みたいなものだから。」
「ハーイ! 気をつけてネー!」
 俺と撫子はヴィクトリアに挨拶して車から降りた。そして車が去っていくと俺は撫子に手を振って家へと帰っていった。これからは俺が撫子の家に行くようにしなければ。それも連絡しとかないと…。何か起こってからは困る。

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08.25
 ギィン!
新天「(カットボールか!)」
 打球はセカンド左へのゴロ。なんでこうも簡単にアウトになってしまうのだろうか。あのピッチングは私たちの打線では通用しないというのでもあるのか。そしてこの小雨だというのにコントロールが一切乱れない。守備陣も声を出してしっかりと守っている。一点が果てしなく遠い試合になりそうだ。
芦毛「上等じゃねえか。絶対に俺が打たせない。必ず一点取ってくれ。」
新天「すみません。ありがとうございます。」
芦毛「謝ることはない。チャンスは必ずやってくる。」
 中山先輩は相手投手の様子を伺うように構えている。それにしてもなんて落ち着きのある投球なんだろうか。私たちの想像以上の投球術を見に付けている。
 シューーー バシン!
 ストライクワン
中山「(ちっ。)」
 またストライクを入れてきた。ポンポンと投げるこの投球は流れを止めさせられる。このままだと…。
 ギィン!
中山「くそ、打ち損じた!」
大嶺「ショート!」
鬼頭「っしゃあ!」
 バシーン! アウト!
松本「しゃあ!」
 カンペキな投球であっという間にアウトになってしまった。相当自信がないと出来ないことだ。ここまで強気のピッチングを見せてくるとは…。
府中「日高、心配そうな顔するな。」
芦毛「まだ終わっちゃいないんだからな。点すら取られていないのだからまだ分からないぜ。」
 先輩はそれでも強気の姿勢を見せていた。そうだよね、私が弱気になってどうする。強気にいかないと。
三由「頑張ってね、戸井。」
府中「大丈夫、俺は打ってくるから。三由もサポート頼むよ。」

 バシーン!
 ストライクバッターアウト!
芦毛「っしゃ!」
 バシン!
 ストライクバッターアウト!
松本「っし!」
 試合は一向に動く気配がない。五回裏が終了してお互いにノーヒット。芦毛先輩は4奪三振とファーボール一つのほぼ完璧なピッチング。対する松本は3奪三振とファーボールは無し、こちらも完璧なピッチングを見せていた。どちらが先に崩れるかの勝負になってきた。
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08.23
「それじゃあ新曲の方も準備いいですか!?」
「はい、大丈夫です!」
 この後も無難にこなしていって流れよく収録をこなしていった。そして私たちのいつもの力で歌えるようになってきた。これがどれだけ大変だったことだが。しかしこれも全部努力のおかげでここまでできるようになったんだ。新曲も…上手く歌えるようにならないと。なんせ私が…センターなのだから!
「それにしてもこの努力はすごいわね。三人ともどう思う?」
「うん、これはすごいとおもうよ! だってあのデビューライブの時よりも上手くなっているし。」
「安定した歌が歌えていて良いわね。そしてあのアリスの加入は大きいわ。」
「私たちも負けないように頑張ろう!」
 私は大きく息を吸って歌う準備をした。私のセンター曲、しっかりと歌わないと。出だしは私だけが歌うのだから…他の皆に迷惑をかけないようにしないと。
「がんばれ!」
 曲が始まる前に楓が私に声をかけてくれた。恭花さんもうんとうなづいている。アリスも…グーポーズで笑顔を見せている。だけどその左手のフワフワしているのは何だろうか。分からないけど…私のことを支えてくれる仲間だっている。それに答えないと!
「いきます!」
 私は声をかけて曲を始めるようにお願いした。そして…イントロが流れて…!

「千代乃…大丈夫?」
「つ…疲れた。」
 収録が終わって私はソファーに横たわっていた。一気に集中して歌ったから体力のほとんどをもっていかれたような気分だった。そして隣から恭花さんとアリスが心配そうに見つめていた。でも三人が近くにいてくれて本当によかった。声をかけてくれるだけでこんなに気分が変わるなんて…。そして紅音さんが私に近づいてきた。
「皆、お疲れ様。千代乃大丈夫? 飲み物持ってきたからこれでゆっくりして。」
「あ、ありがとうございます…。」
 私は紅音さんが渡してくれた飲み物を開けて飲んだ。冷たくて体の中に染み渡ってきた。これがとても美味しく感じる。ありがとう、紅音。
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08.23
「今日、突然集まっていただいて理由は…。」
 姫宮さんが全校集会で今回のことについて説明している。学校の中で誰が喧嘩したのかというのも誰だか分かったらしい。しかし誰も彼のことを責めなかった。何故なら夏葉西の生徒がうちの生徒を囲んでいたらしい。それを助けたのが原因で喧嘩になってしまったらしい。本当に何を考えているのだろうか。しかもその夏葉西の不良生徒は親が小さなヤクザ絡みがあるらしくて…とにかく大変らしい。
「皆さんはこれから何人かにあつまって帰宅することになります。冬休みまであと数日ですが、その間に私たちも対処いたします。ご協力お願い致します。」
 全校生徒がすこしざわついていた。そりゃ実際に事件が起こってしまった。これは紛れも無い事実だ。俺たちもヴィクトリアと共にまず生田の病院に行って迎えに行かなければいけない。あのボディーガードがいれば安心だろう。
「姫宮さんは大丈夫なのかな。一番大変なのは生徒会長だよね。」
「うん…私もそこが気になる。この前の件もあるから…でもあの時は助けて正解だったと思うよ。」
 撫子は姫宮さんのことを心配していた。俺はたしかに姫宮さんのことは心配している。一番大変だというのもわかる。でも…撫子のことが一番心配だ。撫子はこのことを知らない。知ったらきっとパニックになるだろう。以前みたいにあの暗い撫子を…見たくないから。
「ねえ拓斗、この後はヴィクトリアと合流するんだよね。ヴィクトリアの方も巻き込まれないかな…大丈夫だよね。」
「たぶん大丈夫だと思うよ。もし何かあったとしてもボディーガードがいることだし。きっと全員で守ってくれると思うよ。」
 そうだよな。このままではヴィクトリアも巻き込まれる心配も出てくる。それは避けておきたいところだ。学校の生徒とは関係ないヴィクトリアが巻き込まれるのは学校としても全体としても避けたいことだ。
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08.23
 雨の中、二回の裏の攻撃が始まったこの回は池之宮からの打席。普通に警戒されてもおかしくない中、あの投手は強気の様子を見せていた。まさか本気で私たちの打線に挑もうとしているのだろうか。普通に見ても私たちの打線は甲子園でも上位なレベルのはず。もしくは…あの投手の方がすごいのか…。キャッチャーのリードが強気なのか。
大嶺「(内角攻めで最後は変化球だ。)」
松本「(ああ、わかってるよ。勝つための野球をすれば…自然に勝てるんだ!)」
 シューーー バシン!
 ストライクワン!
池之宮「(甘い球はなさそうだな。振っていかないとまずい。)」
 池之宮もそうだ…余裕が無いように見える。それほどすごい投球術を持っているのか…あの投手は…。
 シューーーグッ ブシィ バシン
 ストライクツー!
池之宮「(くそっ。)」
大嶺「(なんだ今のスイングは。すごすぎる…。こええって。)」
 今のスイングでキャッチャーやそれ以外の守備の人たちが驚いていた。外野はすぐに後ろの方へと守りの位置を変えていた。しかし、松本だけは全く動じていなかった。いままでこういうバッターと戦ってきたということなのか。
松本「(地区大会でいた…あの来谷里というバッターよりは打ち取りやすい。怖くなんてないぜ!)」
 ピッチャーは自信をもって振りかぶり、投げる。
 シューー グンッ ブシィバシーン!
 ストライクバッターアウト!
池之宮「ちっ!」
 最後はSFFで空振り三振になってしまった。この雨の中でこの変化球を堂々と投げれることがどれだけ自信のあることか。そして池之宮に対して臆することなく投げるこの精神力。正直私たちの投手陣、私を含めて松本に勝る人がいない。相当な投手だということか。
 グググッ バシン!
 ボールワン!
大嶺「おしいよおしいよ!」
新天「(ボールだったか。審判によってはストライクになりそうな所を投げてくる。なんて投手だ。)」
 新天もその実力に驚いていた。雨なのにこのコントロール。三年生投手の中でもプロ上位に入るであろうという噂は本当だった。これだけの実力があれば私たちの打線は簡単にアウトをとることができるだろう。
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08.22
 バシーン! ストライクバッターアウト!
湯子「なんてピッチング…すごすぎるよ。」
 またもや三者凡退、しかも三者連続三振。スリーアウトチェンジで私はネクストバッターサークルから戻っていった。完全に向こうのペース…相当ヤバイ、このままだと湯子は…打たれてしまう。

 ギィイイイン!
みちる「なにこの打球は!?」
 打球はみちるのいるライト方向へ。そしてグングンと伸びていく。初球からあんなにガンガン振っていってあんな所まで飛ばすの!?
 ガシャン!
 二番バッターがあの長打力、信じられない。しかも運が悪いことにみちるのいる所、あの子ってクッションボールが苦手だったはず…!
みちる「あっ、まって!」
 ああ、犬みたいに追いかけている。これだからみちるは怖い部分がある。あれだけフェンスに当たりそうな打球はあらかじめ何処に飛んでいっても良いように構えて置くようにと教えていたはず。
みちる「もう!」
 シュッ
 しかしこの強肩がある。サードベースへと向かおうとしたバッターランナーはすぐにセカンドベースへと戻っていった。恵まれた体を上手くつかった送球だ。普通だったらスリーベースだけど。
湯子「ごめんみちる! 次は打たれないようにするから!」
みちる「大丈夫です! こっから抑えていきましょう!」
 こんなピンチの場面でバッターは三番。そして巴美羽はあくびして守っている。なんて緊張感が無いのだろうか。でも…ヤバイ状況なのは変わらない…なんとかしないと。
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08.22
「ふぅ…それじゃあ休憩ね。」
 紅音さんの声でアイリングは休憩に入った。そして…私たちの出番がやってきた。
「ピュアプラチナの皆さん、お願いします。」
 私たちの名前が呼ばれた。私たちはすぐに準備して部屋の中へと入っていった。外では紅音がリラックスした表情で肩の力を抜くようにとジェスチャーしてくれた。私はうなづいて返して自分のマイクの前へと立った。楓も恭花さんも目付きをかえてマイクに向かっていた。
「よいしょっと。」
 一人だけいつもの平常心でいる人がいた。アリスだった。アリスはいつもの感じでマイクの前に立っていた。私たちと全く違うところはこういう所かもしれない。良い点でもあるし悪い点ともとらえられる。この良い点を私たちは学んでいかなければならない。
「それじゃあいきますよー! 最初は私たちのドリームでお願いします。」
 私たちはすぐに集中した。音だけに集中すれば…しっかりと歌えるはず。リズムが聞こえてくる。そして私たちの出だしをしっかりと歌えないと…! 私は大きく息を吸って歌い始めた。皆がそろって歌うことができた。あとは私たちができるところをしっかりと歌うだけ。フルだから…最後まで気は抜けない。せっかく良い曲を作ったのだから良い声で届けたい!
「いいね。やっぱりいい声してるよ。」
「全員が個性あって良いよね。」
 歌う。こんなに楽しくて…嬉しいことはほかに無い。そしてアイドルにそれを生かせているということがなによりも嬉しかった。
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08.22
「どうだった!? 生田は無事だったか!?」
「ああ、とりあえず今日中には普通に家に帰れそうだ。」
 俺は学校に到着するとクラスメイトが問いかけてきた。俺は先ほどの状況をしっかりと伝えた。学校の先生は俺たちのことを配慮して休み扱いにはしてくれなかったそうだ。ありがたいことだ。俺たちは生田のことを心配しながら席に座った。しかし俺の頭の中にはそれよりも気になることがあった。生田の言っていた…。「撫子が狙われている。」ずっと頭の中でうごめいている。狙われているって…そんなにヤバイことになっているのかよ…。
「ちょっと…白羽根と六道はいる?」
 突然ドアの向こう側から俺たちの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。よく見てみると生徒会長の姫宮さんがいた。俺と撫子は立ち上がって生徒会長のいる所へと歩いていった。やはり今回の件で呼ばれているのだろう。
「こんにちは。今回の件ですよね。」
「そう…迷惑をかけてごめんなさいね。」
 最初の言葉がそれだった。俺は撫子と顔を合わせてうなづいた。すべてが姫宮さんのせいではない。それは前から分かっていることだ。
「それよりも…姫宮さんはあの後何かありました?」
 撫子が心配そうに姫宮さんに声をかけた。姫宮さんはうなづいていた。とにかく今回の件を踏まえて今後いろいろと会議とかがあるのだろう。
「全校集会で私は今回の件について説明するね。だから少しお話を聞かせてくれるかな?」
 姫宮さんの真剣な顔つきが見えた。俺と撫子は今回の件について生田に言われたこと、すべてを話した。だけど…一つだけ何もいえなかったことがあった。撫子も狙われているかもしれないということだ。撫子は俺が守ると決めたんだ。何があっても…撫子だけは…俺が。

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08.22
松本「(どれだけ成長したか見せてもらうぞ。)」
芦毛「(何年ぶりだろうか…待っていたぜ!)」
 二人の顔は力強い顔で満ち溢れていた。芦毛先輩は絶対に打たれてたまるかという顔、そして松本選手も絶対に打ってやるという顔。お互いに知っているもの同士、どんな投球になるかも変わってくる。でも…成長した今は関係ないのかもしれない。ここで勝負になるのはこれまでどれだけ練習を積み重ねてきたかが関わってくる。
府中「(気を抜くなよ。落ち着いてしっかりと投げれば抑えられる。)」
 府中先輩のサインにうなづくと大きく深呼吸をしてから投げる体勢に入る。
芦毛「(お前と戦うために…俺はやってきたんだ!)」
 シューーー ズバーン!
 ストライクワン!
松本「(やっぱりお前のストレートだよな。変わらないよ、そのノビとかも…さすがというべきだ。)」
 ググググッ ブン バシン
 ストライクツー!
府中「いいよ、追い込んだ!!」
松本「(カーブも変わってない。だけど…キレが良くなったな。そして…スクリューを投げるんだろ…。いいよ、俺が打ってやる!)」
 松本選手がものすごい集中力で芦毛先輩を見つめていた。スクリューが来ることを分かっているかのように構えている。それにあえて芦毛先輩はスクリューを投げるのだろう。意地と意地がぶつかり合う瞬間というのはこういうものなのかな。
芦毛「っらあ!」
 シュルルル
松本「(来た!)」
 ギィイン!
松本「ちっ。」
 バットに当てた打球はピッチャー正面の小さなフライになった。芦毛先輩はフライをしっかりと捕球した。
 バシン アウト!
芦毛「さすがだな。」
松本「次は打つからな。」
 二人は交互に言葉を交わしてベンチへと戻っていった。一打席目は芦毛先輩の勝ち、この勝負はまだ続いてく。
卜部「ナイスピッチング!」
芦毛「ああ、ありがとう。」
池之宮「次は俺からだな…よし、いくか。」
新天「点とってやりましょう。」
中山「ランナー残っていたら俺が返してやるからな。」
 先輩の頼りになるプレーと四番から六番の力強い打線が本当にこのチームの原動力になっている。相手の松本投手はどうやって抑えていくのだろうか…。こういうのは勉強になるからしっかりと見ておかなければ。
 ポツ…ポツ…
由紀「雨…振ってきたわね。」
亜弓「本当だ…。」
 少しだけど雨が降ってきた。しかしこの雨は小粒…いや、霧雨になりそうな雨だ。この雨の中だと…投手はより精神力を削りあって投げるのだろう。
松本「雨か…大歓迎するぜ。」
大嶺「だな…お前が好んで練習するぐらいだからな。よし、思いっきりいくぞ!」
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08.21
 バシーン! ボールファア!
 湯子がプレッシャーに負けて六番バッターをファーボールで塁に出してしまった。こんな状況になってもしっかりとやってくれるといいのだけど…。でも…心配だ。この後どうなってしまうのか。相手の勢いに飲まれなければいいけど…。
 シューーー ギィン!
 ファールボール!
 どんどんタイミングが合ってきている。私には分かる。向こうは速球に慣れている所があるからこのぐらいの球の速さは普通の速さなのだろう。ジャスミンのストレートが良い証拠、このままだと…打たれる!
 ギィイイン!
 打球は力強くセンターへと伸びていく。しかしこれは真正面になりそうだ。
 バシーン! アウト!!
亜美「いったい!」
 ものすごい勢いでセンターのグローブに収まった。これでスリーアウトチェンジになった。たしかにあの勢いで取ったらいたいよね。
みちる「ナイスピッチングです! 点取られて無いですよ!」
湯子「ありがとう。なんとかしないとね…あのバッター皆すごいよ。」
巴美羽「そりゃ打たれるよね。向こうにとっちゃこっちのストレートは遅いも同然だからね。体格の違いもあるし。」
巴美羽も分かっているようだった。たしかにこのままだと…厳しいところがある。どうにかして私たち守備陣がしっかりと守ってやらなければいけない。なんとか守らないと!
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08.21
「準備はいいね。それでは始めるよ。」
 私たちはガラスの向こう側にいるアイリングの四人を見つめた。イヤホンを片手で抑えるようにして楽しく歌っている。だけどもちろんながら踊ってはいない。各々が体を揺らしながら歌ったり、笑顔を見せている。私たちもウキウキするように体を揺らしてしまう。これはライブでやっていた「エレガントガール」だ。踊っていない分、綺麗に聞こえてくる。当然のことかもしれないけど…とにかく皆上手い。アイドルの鏡って言いたくなりそうなぐらい…聞いているだけですごさが分かりそうなぐらいだ。
「うん…。」
 隣で楓は目を瞑りながら聞いている。音だけに集中しているのかな。恭花さんもじっと見つめながら聞いている。アリスにいたっては声は出さないものの、体を動かしていたりファンの人たちがやりそうな行動をとっている。どこいっても変わらないのね。そして…聞きながら調節したり、音波を見ている人たちはかなり集中して聞いている。これがプロ…素晴らしすぎる。それでも…やっぱりダメなところはしっかり言うのだろうか。
 曲が終わるとアイリングの人たちが一息ついた。そしてプロの人たちからの指示を待っていた。
「ちょっともう少し力強さを入れて歌ってみて。二つを聞き分けてみるから。」
「わかりました!」
 そしてまた録音が始まる。続けてやるのか…それがどれだけ大変なことなのかは分かるけど…あの人たちは楽しくやっている。それが…プロというものなのかな。
「千代乃、頑張ろうね。」
 恭花さんが私の肩を叩いて声をかけてくれた。うん、私たちもこれから同じようなことをするんだ。だから…頑張らないと。

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08.21
「こういう状況だから…俺は…どうすればいいんだ?」
「拓斗…無理しないでね。これで怪我されたら本当に…嫌だからね。」
 たしかにそうだ。撫子に迷惑をかけることはできない。だからこそ…助けてあげたくても限度がある。こういうときは…どうすれば。
「私、他の人たちに連絡してみル。」
 ヴィクトリアが突然携帯を出して電話をし始めた。そうか…ヴィクトリアってリムジンでやってくるほど超お金持ちなんだよな。だとしたら…ボディーガードとかか?
「ヤホー。お願いがあるんだけど、ボディーガード増やしてくれる?」
 まさかのあっていた。しかしボディーガードってどんな人たちだよ。予想するように黒服にサングラス、そして白人とかでかい人、黒人とかいそうで怖い。ヴィクトリアは絶対に敵に回したくない存在だ。
「すごいねこの子。これが撫子の親友だということがさらにすごいね。」
「俺もなんだか…怖くなってきたよ。」
 磯見と藤浪はぞっとした顔で立っていた。とにかく…生田がこれからどうするのかってのが気になる所だ。
「そういえば学校…連絡したのか?」
「私がしておいたよ。先生からは許可もらったから落ち着いたら戻ってきてって。」
 さすが撫子、電話しておいてくれたのか。ありがたい。俺の彼女だということが本当に誇りだ。撫子には…手出しさせない。そして…これ以上仲間たちにも絶対に怪我はさせない!
「なあ拓斗。一ついいか?」
「なんだ学。」
 俺は生田のいる方へと歩いていった。そして耳元を近づけると小声でいった。
「撫子のことも狙われている。おそらく有名だからだろう。守ってやってくれ。」
「そうか……わかった。」
 俺は少し心臓をドキドキとさせながら体勢を立て直した。撫子が…狙われているの…か。
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08.21
芦毛「(こいつが四番か…なかなかでかいな。)」
 四番の大嶺がバッターボックスに入った。キャッチャーだったから分からなかったけど、立ってみるとかなりでかい。そして構えからしてかなり力強さが見える。甘い球を投げたら簡単に持っていかれそうだ。
大嶺「(スクリューとか投げるよな。どんな球か楽しみだぜ。)」
 シューーー バシン!
 ストライクワン!
 まずストライクを入れていった。かなり冷静に構えている。スイングが見てみたい、どれだけ速いのか…。
 シューーー バシン!
 ボールワン!
新天「大丈夫ですよ! こっちに打たせて大丈夫です!」
卜部「バッチコイ!」
 後ろからも力強い声が聞こえている。これなら自信を持って芦毛先輩は投げられるはず。
 シューーー ギィイイン! ガシャン!
 ファールボール!
 引っ張った打球はライトのファールボールのフェンスに直接当たった。あのスイングは相当なものだ。
府中「(ここまでやるか…なら…スクリューで。)」
 芦毛先輩が府中先輩のサインにすぐうなづいた。足をあげて踏み込む。
 シュッ シュルルルル
大嶺「(こいつか!)」
 バシーン!
 ストライクバッターアウト!!
大嶺「だーっ!(これが入るか!)」
芦毛「っしゃ!」
 見逃し三振で見事に四番を退けた。ワンアウトをとって五番の鬼頭へと回ってきた。このバッターは癖のあるバッターだとニュースでやっていた。それは…。
池之宮「(このフォームって…。)」
 やや蟹股になりながら構えるこのフォーム。どこか見たことあるようなフォームだけどこれで成績をしっかり残してきている。この強豪校の五番になるほどだから…相当なバッティングの持ち主だろう。
 グググッ ギィン!
芦毛「ちっ!」
 打球はピッチャーの足元を抜けてセンターへと転がっていく。しかしセカンドの卜部先輩が飛びつく。
卜部「っらあ!」
 バシン!
 捕った! そしてカバーに入ったショートの栗山先輩にトスする。
栗山「せんきゅ! っらあ!」
 バシン! アウト!!
「おおおおおお!!」
 球場が大きく沸いた。このファインプレーはでかい。これでツーアウトランナーなしになった。そしてバッターボックスには…。
ウグイス嬢「六番、ピッチャー、松本君。」
 あのライバル、松本がバッターボックスに入っていた。

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08.20
「学! 大丈夫!?」
 病院に到着して生田のいる部屋に入るとそこには軽く包帯をしている生田の姿があった。俺たちの顔を見ると生田は苦笑いした。俺たちもすぐさま生田の近くに移動した。
「へへへ、ちょっくらドジっちまった。」
「ドジったって…そんなレベルじゃないだろ。何があったんだって。説明してくれよ。一番心配している目黒も目の前にいるんだからさ…。」
 俺が説明すると生田は足元を見た。足にしがみついて泣いている目黒の姿がそこにはあった。
「お願い…私心配したのよ…。ちゃんと説明して…。」
 目黒はそのまま号泣していた。生田の体をがっしりとつかむように抱きしめて泣いていた。愛する人がこんなことになってしまったのだから、そう思ってしまうのも当然のことだ。生田は大きくため息をついて重たい口を開いた
「突然別の学校のやつらが俺を囲んでさ…俺をやっておけば誰か動くだろって言って俺を襲ってきたんだ。おそらく俺たちよりも年上…二年生か三年生だと思う。」
 俺はそれを聞いて確信した。あのことは確かに本当だったんだ。しかも…よりによって生田が被害者になるなんて…想像もしていなかった。
「バットとか持っていたんだけど…そいつらは襲ってこなかった。おそらく逃げようとしたらやろうと思っていたんだと思う。そしたら…うちの学校の先輩が助けてくれて…俺は逃げたんだ。その後のことは全く覚えていない…。もう必死で逃げたから…。」
「そうか…怪我はどうなんだ?」
「一応精密検査してたけど、頭からちょっとだけ血がでたりかすり傷はあるぐらい。大きな怪我はないよ。今日中には帰宅できるよ。」
 とにかく怪我は大きいものではなくてよかった。でもまだ安心はできないな。この後どうなるかが本当に心配だ。
「私……私っ。」
「ごめんな美幸、心配かけてしまって。もうこんなことにならないようにするからな。」
 生田は目黒を撫でて落ち着かせていた。…俺に何か出来ることって…あるのか?
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プロフィール

reser42

Author:reser42
自作小説などいろいろつぶやいていきます

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