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12.28
「おはよう!」
 夏葉駅に到着すると目黒が手を振って待っていた。とても涼しそうな格好をしていた。白のワンピースだ。
「おはよう美幸ちゃん。お荷物は昨日送っておいたからね。」
「ありがとう撫子ちゃん。」
 二人はわたわたと抱きしめ合いながら挨拶していた。朝からとても元気なこった。それにしても目黒も涼しそうな格好して…。
「白羽根くん…その格好で大丈夫? 死なないでね。」
「余計なお世話だ!」
 俺は心の中では泣きながらもやばいと感じていた。あとでこの上に着ているものを脱がなければ。
「拓斗は始めてだからね。私がしっかりと教えてあげないと…死人がでちゃう。」
「さらっとあぶないこと言うなよ。」
 俺と撫子と目黒は笑いながら急行乗り場に移動した。特別快速の時間まであと40分だ。

 ガタンゴトンガタンゴトン

「俺は知らないんだけど、撫子と目黒はどんな作品を出展するの?」
 すると二人ともガサゴソとバックをあさった。そして中からは今日売る同人誌が入っていた。
「私は合同の画集と同人専用の漫画&画集!」
 撫子が三つほど見せてきた。撫子の絵をみるとその世界に引き込まれそうな雰囲気、そんなのが同人誌だとしても感じられるなんて…。
「私はこの前描いてた風景絵を中心に…。」
 目黒はゆっくりと風景画集を出した。また違った世界観が俺には感じられる。やっぱり絵ってすばらしいな。

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12.28
友亀「よっしゃあああああ!」
由紀「やった! 快挙だよ!」
深沢「やりましたね!」
日下部「一つ壁を越えたな。」
 すばらしかった。ここまで投球数78球。ピンチの場面もあったけど、すべて押さえきった。私は目の前で快挙達成を見ることができた。それは参考記録であったとしてもすばらしいことなのだ。
 タッタッタッタ…
 相手の四番打者が一塁にかけようとしていたバッターの呆然と立っているところに近寄った。
富田「戻るぞ…。」
浜本「先輩…すみません…俺っ。」
富田「泣くな…お前は来年があるんだ。ここで泣いている場合じゃないぞ。秋だってあるんだ。…俺たちの果たせなかった夢…かなえて見せてくれ。」
浜本「……はいっ。」
 二人の選手が駆け足で整列しに移動している。その目には涙が浮かんでいた。勝者と敗者。………なんども考えてしまう私は感傷的なのだろうか。
審判「礼!」
皆「したぁああああ!!」
 球場から大きな拍手が聞こえてくる。おそらく館川の快挙達成に対する拍手が多くだろう。しかし相手のベンチからも大きな拍手が聞こえてくる。
成見「館川…だっけな。」
館川「俺か?」
成見「また投げ合おうぜ。」
館川「ああ、待ってるぜ。」
 館川と成見があつい握手を交わしている。二人ともとてもうれしそうな目をしていた。片方は本当の嬉しさ、もう片方は本当のくやしさがあった。

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12.26
帝沢「あいつら何考えてるんだ。」
 俺はさっさと着替えて指定されていた部屋に戻った。そこは…。
帝沢「これはレシア…? いや、レオナの部屋? どっちだ?」
 見た限りでは完全に女子の部屋だった。おいおい、どういうことなんだよ。

レシア「お姉ちゃんのバカ。まだいたじゃない。」
レオナ「見られたって何も減りはしないよ。」
レシア「減るの!」
レオナ「はっはっはっ! まあ、早く体洗いなさいな。」
レシア「わかったわよ…。」
レオナ「……それで? 今日のテロで何人死んだの?」
レシア「……ざっと20人ほど。ランクAも殺されてた。それと私たちのリーダーが。」
レオナ「おそらく最初に襲ってきた第二の人類残存舞台だろうね。まだ生き残っていたのか。」
レシア「私たちの生活になじんで来た人たちはもう差別なく生きているけど…過激派がまだいるのね。」
レオナ「まだ終わってから8年しかたっていないからね。そう簡単には変わらないよ。」
レシア「私って…まだ弱いのかな。」
レオナ「まーだまだ。弱い弱い。もっと強くなりなさい。」

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12.26
「よっしゃああ! 声出していこう!」
「ばっちこいやぁああああ!」
 キィイイイン!
「らぁああああ!」
 バッティング練習、みんなの声が練習場に響き渡る。第一試合以降から気合が入ってきたが、神宮大会を決めてからさらに気合が入っていた。私たちにとってみれば大きな収穫になった。打撃も好調になってきている。これなら大会本番も心配はせずにいけそう。
堀近「もう心配はなさそうだな。」
佐奈「みなさん元気にやっていますので…。あ、ピッチングしに行きます?」
堀近「そうだな。」
 私と堀近さんは歩いてブルペンに移動していった。私は昨日姉に言われたことがどうしても気になっていた。私は堀近さんに声をかけた。
佐奈「堀近さん。お聞きしたいことが。」
堀近「なんだ?」
佐奈「私、昨日姉にフォームを変えたほうが良いといわれました。体の開きが早くて、球も軽いと…。私、そうなってますか?」
 すると堀近さんは何かピリッと感じとって目つきをかえて言った。
堀近「気づかれちまったか…。」
佐奈「えっ?」
 気づかれた? どういうことなのだろう。
堀近「椎葉、姉のフォームはトルネードスローだろ? なぜかわかるか?」
佐奈「なぜか? うーん。」
堀近「お前と姉は似てるんだ、体格が。」
佐奈「体格?」
 すると堀近さんは上を向いて話した。
堀近「姉が大きな活躍し始めたのは三年になってからかな…。あのころにフォームが変わってすごく良い投手になったんだよな…。」
 そして堀近さんはまた私の方を見た。
堀近「俺から見ればお前も姉も体が細い。つまり力がものすごくあるというわけではないんだ。運が良いことに二人ともセンスもあって地肩がある。さらにいえば身長も女性にとっては高い。しかしそれだけでは足りなくなってしまうところがある。体の付き方が男性と女性では違うからな。だから姉はトルネードスローというさらに球の重みや球威、速さなどをつけたってことだ。」
佐奈「それでは私は…。」
堀近「姉と違ってまだまだ体全体の力を使えてないということだ。それと元々のクセに体の開きが早いのが入っている。だから…姉は球が軽くて打たれるって言ったのだろうな。」
佐奈「………。」
堀近「すまねぇな、神宮大会も近いってのに。」
佐奈「堀近さん!」
 私は覚悟を決めた。ここでやらなければいつまでたっても姉に追いつくことが出来ない。大学で姉と戦えるチャンスなんてもうほとんどない。いまの私を姉に見せてやりたい。元の姉に戻したい。その気持ちでいっぱいになった。
堀近「どうした?」
佐奈「……今からフォーム改造します。手伝ってください!!」

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12.26
「おはよー。……ねっむ。」
「おはよう。寝不足なの? だめだよ、体調はしっかりしてかなきゃ。」
「いやちげぇよ。こんなに朝早く起きるのは久々だからさ…。」
 おれは大きなあくびをしながら撫子のいるところに到着した。撫子は俺が前に買ってあげた服を着ている。いよいよ今日、コミケで撫子の販売が始まる。朝の五時、コミケ会場までは二時間かかるのだ。
「チケット持った?」
 撫子が俺にチケットの確認をする。俺はバッグからチケットを取り出して見せた。特別車両に乗るためである。
「おっけー。それじゃあ行きましょうか。」
 しかし撫子の様子を見て俺はふと思った。
「撫子、そんなに荷物少なくていいのか? 販売するものってどうやって持っていってるんだ?」
「ああ、心配しないでいいよ。販売の仲間の人が車で先に持っていってくれるから。」
 それを聞いて俺は少しホッとした。そして撫子と共に電車に乗った。夏葉駅から急行に乗って途中で降り、そこから特別快速に乗ってあとはかもめ線に乗ればコミケ会場はすぐそこだ。長い距離を進むため、俺は電車の中でも休めるようなグッズを用意した。
「目黒ちゃんとは夏葉駅で合流ね。」
「生田は部活だろ。大変だよなぁ。」
 そう、今日は目黒も今日販売である。実は俺はコミケ初である。だから撫子と目黒は先輩だ。いや、大先輩と呼ぶべきであろう。俺は「戦場」とも呼ばれるコミケに出陣することになった。バッグからパチャパチャと四本のスポーツドリンクが音を立てていた。

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12.26
 ツーアウト。三番の二年生、浜本が左バッターボックスに入った。
富田「頼むぞ! お前が頼りだ!」
羽田「チームの首位打者の意地を見せてやれ!」
敵スタンド「かっせーかっせー浜本!!」
 相手から、すごい応援だ。大きな声でプレッシャーを与えてくる。この状況になれば必死になるはずだ。
味方スタンド「あと一人! あと一人!」
 こちらも負けじと館川を後押しする応援が大きな声で聞こえてくる。記録のかかったこの一打席、野球の神様はどっちに微笑んでくれるのだろうか。
友亀「(ありったけをぶつける気持ちで来い!)」
館川「(そのつもりさ!)」
 シュッ!
館川「らぁあ!」
 シュゴーーー バシーン!
 ボールワン!
浜本「っぶねぇ。」
 体が一瞬ピクッと動いたがバットは出さなかった。さすがは三番に入ってるだけはある。そして館川がワインドアップで投げる。
 シュッ!
友亀「(良い球!)」
 グググググッ
 パームボールだ。
浜本「(ためて…ためて…!)」
 グッ
浜本「打つ!」
 ギィイイイン!!
敵スタンド「よっしゃああああ!!」
 打球は勢い良くセカンドの頭へ。やばい! 止めて!
友亀「セカンド!」
卜部「らぁあ!」
 カスッ!
 ああっ、グローブの先に当たって後ろに飛んでいった。これは落ちてしまう!
浜本「しゃあああ!」
吉村「よし! つないだ!」
 打球も弱まってライトの前に落ちてしまう…。
府中「届けッ!」
 ダッ
 府中先輩が飛びついた! いや、府中先輩の足の速さと守備なら!!
 バシン! ズザザザザ
 捕球したかどうか見えない。取れたのか、取れなかったのか!?
 バッ
 府中先輩がグローブを上に上げた。果たしてバウンドは!
審判「アウトーーーーー!!!!」
館川「しゃあああああああ!!!!!」
 してなかった! やった、完全試合達成だ!!

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12.26
 なんともひやひやする状況だ。パームボールで勝負。しかもワンストライクスリーボールの状況でよく投げれる。すごいものだ。館川は私とは違ってあるものを持っている。それはこういう大舞台、何か緊張する場面でも動揺せず、どっしりとしているところだ。私だけじゃない、きっと由紀にもそう見えているはずだ。そして今はフルカウント。さて、どう勝負するのだろう。
由紀「(友亀のことだから…このままパームボールで勝負だろう。)」
友亀「(ここはガンガンいくぞ。パームボールだ。)」
館川「(ああ、まかせろ。)」
 館川が腕を上げる。この一球で決まるのだろうか。
 シュッ ググググッ!
谷村「(またパームだと!?)」
 よし、タイミングがずれている。しかもストライクゾーンに入っている。これなら!
谷村「ぐっ。」
 ギン!
 ファールボール!
友亀「(当てた!?)」
谷村「っし。」
スタンド「ぉぉぉおおお。」
富田「ひやひやさせんなよ!」
 カットした、タイミングは完全に外れていたのに。相手も必死ってことなのだろうか。こんなにねばっこいバッターは投手にとってはイヤだ。
 ググググッ ギン!
 グググググッ キン!
 ファールボール!
 二球ともパームボールを投げているが、相手バッターは全てカットしている。しかも少しずつ当たりが良くなってきている。ここはストレートを投げてタイミングを狂わせればきっと三振してくれる。
館川「(どうする? またパームボールを投げるか?)」
友亀「(いや、ここでパームは危険だ…。ならば…。)」
谷村「(首を振っている。ダミーか? それともストレートか? いや、高校生の頭でそこまで出来るわけがない。ここはストレートだ。絶対にストレートが来る。)」
友亀「(これだ。)」
館川「(…! なるほど。)」
 館川が大きく腕を上げる。思いっきり投げるつもりだ! 相手にはストレートとわかってしまうだろうが、これは有効的な判断だ。頑張って! 館川!
由紀「(ダメだ。ストレートを投げたら打たれる! それに力んでる、ボールになる!)」
谷村「(ストレート来い!)」
 シュッ!
館川「っらあ!!」
 シューーーーー
谷村「(インコース! ボール球だ!)」
 だめだ! ファーボールになってしまう!
 ググググッ バシーーーン!!
 ストライクバッターアウト!!
友亀「よっしゃあああ!」
館川「っらあああああ!!」
谷村「…………嘘だろ。」
由紀「ナイスボール!(まさかスライダーとは…。)」
スタンド「うわあああああ!!!」
 す、スライダー。なんということだろうか。こんな場面で、しかも誰しもが館川の様子を見てストレートかと思い込んでいた。しかし投げたのはスライダー。こんなの…見事すぎて何も言葉が出ない。館川のキレのあるスライダーと友亀のリードがあってこその配球だ。すばらしい。
館川「(かつての決め球もここまでキレをあげることが出来るなんて…。いままで努力した結果が出たぜ。)」
 あと一人。ここで決められるか、決められないか。泣いても笑ってもこれが記録のかかった最後のバッターだ。

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12.26
萌「皆大記録だ大記録だ、と言ってるけどそんなにすごいことなんですか?」
美和「そうねぇ。そう簡単に出来ることではないわね。もし出来たらプロから一気に注目が集まるからね。」
萌「たった一回でねぇ。」
綾「フレー! フレー! 館川!」
 スタンドから快挙達成を願った応援が聞こえてくる。相手のチームからは必死に一本ヒットを打ってくれという応援が聞こえる。達成されるなら、快挙と屈辱が共に出てくる。これが勝負の世界というものだ。
友亀「(後二人…。)」
谷村「(そう簡単にさせてたまるかよ。)」
 ワンアウト。バッターは谷村。前の打席ではセンターフライに打ち取っている。注意して投げてね。
 シュルルルル バシン!
 ボールワン!
 スライダーが外に外れた。バッターはボールの目にあっているようだ。これは厳しい戦いになりそうかもしれない。
 シューーー キン ガシャン!
 ファールボール!
 ストライクゾーンに入ったストレートを後ろにカットした。タイミングもしっかり合っている。
友亀「(厳しいところいくか?)」
館川「(そうだな。)」
 館川が足をあげて横から投げる。
 ググググッ バスン
 ボールツー!
谷村「(よし…よし!)」
吉村「バッター見えてるよ!!」
中本「いいぞいいぞ!」
 あのパームボールを見た。よほど目に慣れているということなのだろうか。
 シューーーバシン!
 ボールスリ!!!
敵スタンド「しゃああ!! ボールスリー! ボールスリー!」
友亀「大丈夫だ! 館川なら問題ない!」
館川「(いいんだ、まだノーヒットノーランがあると考えれば気持ちが楽になる。あとは構えたところになげるだけだ。)」
谷村「(落ち着け、相手はストライクを取りにくるはず。そこを狙えば。)」
友亀「(さて…ここまで来たか…おそらくストレートを待つだろうか…。いや、狙うならここはパームボールで勝負だ。)」
 友亀がサインを出して構える。館川はゆっくり足をあげ、サイドから臨場感溢れるフォームで投げる。
 シュッ! グググググッ
谷村「なっ!」
 バシン!
 ストライクツー!!!
友亀「よし! いいぞ!」
谷村「(ここでパームボール!?)」
富田「なんて強心臓の持ち主なんだ。」
真希「ひやひやさせるねぇ。」
瞳「私はこの雰囲気好きだよ。なんども柔道とかで経験してるからね。」
恵美・千恵美「私はごめんだね。」
美琴「あ、被った。」
恵美「同じこといわないでよ!」
千恵美「そっちこそ!」
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12.25
「白羽根、大丈夫か?」
「白目むいてるぞ。」
 俺は生田と磯見の肩を借りながらプールを後にした。夕日が綺麗に輝いている。女子たちは後ろでめちゃくちゃ楽しそうにはしゃいでいる。
 撫子につれられた後、ボートプール10回、しかも上級コースまで。滑り台5回という信じられない回数だった。そのせいで俺はへなへなになってしまった。撫子はというと元気にありふれた様子だった。本当に文科系か? 運動もできるんじゃないか? 普通に運動部に入ったら体力的には上位なのではないのだろうか。撫子の不思議なことばかりが見つかってくる。驚きを隠せないときが続いた。
「ごめんね拓斗、無理させちゃって。」
 撫子が俺によってきた。生田と磯見は肩を離して、それぞれ自分の彼女のところに行った。
「問題ないよ。それより今日は楽しかったか?」
「うん! すごく楽しかった!」
「女の子たちとも仲良くできた?」
「うん。喧嘩もしなかったし、なにより皆がまとまって仲良くなれてよかった。ありがとう、拓斗のおかげでいろいろと自信が持てるようになったかも。拓斗に会ってなかったら今頃どうしてただろう…。」
 撫子は目を輝かせながら太陽を見ていた。俺はうれし涙が流れてきた。こんな優しい彼女をもてるなんてなんて幸せなことなのだろうか。俺は撫子にばれないように手で目をぬぐった。
「さあ、帰ろうか。そして夏休みは長いからもっと楽しもう!」
「うん!」
 俺と撫子は手をつないで帰った。後ろの生田と目黒、磯見と藤浪もすごく楽しそうな顔をしていた。これが撫子の望んでいたことなのだろうとも感じた。

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12.25
その後、七番の栗山先輩が良い当たりを打つものの、ライトフライになってスリーアウトチェンジになった。そしていよいよ七回のマウンド、コールドという条件を作って館川がマウンドに上がった。ソレは完全試合が決まるかどうかのマウンドだった。
成見「ごめんなさいっす。俺が打てなかったから…。」
吉村「大丈夫だ。それよりもこの回でヒットを打たなければな…。こんなすごい相手にはおそらく勝てない。だけれども完全試合だけは免れたい。」
谷村「俺たちの意地をみせてやろうぜ。一泡吹かせてやるぜ。」
田淵「俺が先陣を切ってくるぜ。」
須賀「俺たちの野球はチャンスで富田に回すことだ。富田、頼むぞ。それまでに俺たちがまわしてやる。」
富田「わかった。」

スタンド「おい館川! この回押さえれば完全試合だぞ!」
「館川くーん! 頑張って!!」
館川「あれ? そうだったっけ?」
友亀「知らなかったのかい。でもいつも通りだ。その様子じゃ緊張することはなさそうだな。」
館川「むしろ楽しんでるぜ。とりあえず、一番の目標は勝つことだからな。」
友亀「なら問題なさそうだな。いくぞ!」
 友亀がマウンドからキャッチャーの位置に戻っていく。由紀はそのままレフトのポジションについた。
館川「(ここまで来ちまったのか。最初は一年からレギュラー貼れると思ったけど…そうとは問屋がおろさなかった。むしろ同じ一年にすごいやつもいる。しかも女性だ。悔しいことだったけれど…俺だって負けられないんだ。ここで俺はエースになる!)」
友亀「良い気合の入り方だ。これなら問題なさそうだな。」
 七回の裏、一番の田淵が入る。ここから三順目だ。あと三人、落ち着いていけば問題ないはず。でも高校野球、何が起こるかわからない。この状況から逆転だってありえる。頑張って!
 シューーー バシン!
 ストライクワン!
優衣「球威衰えてないわね。」
香澄「すごいよね、大記録なんでしょ?」
久美「参考記録になってしまうけど、すごいことだよ。」
 グググッ
田淵「(くそっ、何なんだよこの球は!)」
 ブシィ バシン! ストライクツー!
阿湖音「フフフ、私の与えた力はすばらしいものだな。」
美琴「接点ないじゃん。」
阿湖音「言うな! わかっていても言うな!」
 シューーー バシン! ボール!
友亀「(手を出さなかった。)」
田淵「(あぶっ。)」
 相手のバッターもそう簡単には引き下がってはくれなさそう。これが高校野球だ。これが怖い。
 シューーー
 キィイン!
田淵「クソッ!」
友亀「セカン!」
卜部「おう!」
 卜部先輩がしっかりとボールを捕球してファーストに送球する。
 パシン! アウト!!!
 これで後二人、あと二人だ。

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12.25
コラボ2a-ps(提出ver2)


亜弓「ということで……はい。」
撫子「特別企画、コラボレーショントークショー……。」
亜弓「……。」
撫子「……。」
筆者「お、おい。二人とも緊張しないで。」
亜弓「あなたが勝手にコラボやろうって考えたんでしょ!」
撫子「私たち初対面なんですから緊張するに決まってるでしょ!」
筆者「…スマン。」
亜弓「と、いうことで…。ドクターK少女から日高亜弓です。」
撫子「えーっと、か細い藍のバラから六道撫子です。」
亜弓「それにしても撫子さん、綺麗な藍い目をしてますよね。」
撫子「亜弓さんにも見えるんですか?」
亜弓「ええ、とても不思議な感じがします。」
撫子「私にも亜弓さんから不思議な雰囲気が感じられます。」
亜弓「そう?」
撫子「ええ。さすが女子が男子のところに混ざって野球をやっているだけあります。」
亜弓「ありがとう。ということで今回はクリスマスだからこんな企画を立てたらしいけど、いろいろとお互いの生活とクリスマスについてお話いたしましょう。」
撫子「そうですね。ではまず…初恋の相手ってなんですか?」
亜弓「いきなりものすごい質問しましたね。(笑)」
撫子「私たちは恋愛がメインですからねぇ。ちょっと聞きたいなーってところがありまして。」
亜弓「実は私、初恋はしたことないのです。」
撫子「そうなんですか。でも私だって高校一年生のときに拓斗に一目ぼれで、始めて好きになりましたし。遅くはないですよ。」
亜弓「私にも高校で春が来ますかね?」
撫子「来ますよ来ますよ! 応援してます!」
亜弓「ありがとう。そうですね…、私は文科系ではないのであまりわからないのですが、何故絵を描くことが好きになったのですか?」
撫子「そうですね…本当に小さいころから絵を描くことが好きだったのです。赤ちゃんのころから絵を描き始めていて…。両親は最初からすごく不思議な絵を描く子っていわれてました。そして幼稚園で絵を描く授業で初めて先生がすごいって褒めてくれて…。それから展覧会にも出すようになって…。本題を忘れてしまってましたね。でもそれぐらい前から絵を好きになって、自分が知らないうちに好きになっていたというべきですかね。」
亜弓「そうなんですか。私は運動系なのですが、運動となると誰かあこがれる人がいてからこそ始められたっていうのが良くありますね。私が好きになった理由はプロ野球の特集がやっていたときに、全ての選手のすばらしい動きを見て感動しました。私もあんなふうに野球ができたらどれだけ楽しいのだろうかなーって思ってました。」
撫子「目標や憧れから好きになっていくのですね。」
亜弓「そうですね。」
撫子「なるほど…。それと少し気になったのですが、亜弓さんって野球やっていても日焼けしてませんね。」
亜弓「元々焼けにくいという性質もありますが、紫外線とか気になりますね。だから対策のためにクリームなどは毎回塗っています。汗で取れてしまうときもありますがね。私だけ特別なのかもしれないですね。同じ高校の女性で羽葉由紀というお友達がいるのですが、由紀は日焼けしてますよ。でもあまり気にしてなさそうですが。」
撫子「そうなんですか。私はインドア派なので焼ける心配というのはないですが…なにせ彼氏がアウトドア派なので…。」
亜弓「そうなんですか。私に彼氏が出来たら…どうなるんだろう…。」
撫子「私と似てそうですね。」
亜弓「似てる?」
撫子「一度好きな人にほれ込んでしまったらもうその人しか見えなくなってしまいそうな感じですね。」
亜弓「なるほど…。」
撫子「すごくスタイル良いですし、きっとモテそうですね。」
亜弓「そんなことないですよ。野球やっていると太ももとか大きくなってきますし…。なにせ撫子さん、私より胸ありそうですし。」
撫子「や、やめてください! 恥ずかしいじゃないですか!」
亜弓「なんだか…言ってる私自身も恥ずかしくなってきました。」
撫子「ならいわなくても!」
亜弓「ごめんなさい。(笑)」
撫子「えへへっ。」
筆者「すみません、ここでか細い藍のバラの挿絵として描いてくださって、今回のコラボ絵にも描いてくださった輪遊さんからの質問なのですが、ズバリ、女子力とは何ですか? とのことです。」
亜弓「私は…家事全般かなぁ…。」
撫子「私はセンスだと思います。」
亜弓「センス?」
撫子「たとえば…服を選ぶセンスとかかな。勘の鋭さともいえるかな?」
亜弓「感性が不思議ですね。」
撫子「よく言われます。」
亜弓「そして今日はクリスマスですが…サンタさんは何歳までいると信じてました?」
撫子「私は小学六年生までですね。夜中なかなか寝れずに起きていたら入ってきたのが荷物を持った父で…なんかショックでしたね。」
亜弓「ああ~、知ってはいけないものを知ってしまったときってショック受けますよね。私は幼稚園生のとき…5才のときです。」
撫子「早いですね。」
亜弓「ええ、私はちょっと寝るのを我慢して入ってきたところを捕まえようとしたんです。そして入ってきて抱きしめたらそれがお母さんだったってオチです。私、おお泣きしていたみたいです。」
撫子「幼いころに知ってしまうとさぞかしショックになってしまいそうですね。」
亜弓「寝かしつけるのにすごく苦労したといわれました。
撫子「あははっ、それは大変そうですね。(笑)」
筆者「二人とも、そろそろ時間なので。」
亜弓・撫子「はーい。」
筆者「ということで二人とも最後にひと言。」
亜弓「じゃあ…私から?」
撫子「どうぞどうぞ。」
亜弓「えっと、野球小説、『ドクターK少女』。絶賛連載中です! 女の子が男子と混ざって野球をします。本編では今、甲子園に向けて地区大会を戦っています。みなさんも私たちの高校を応援、宜しくお願いいたします!」
撫子「はいっ、恋愛小説の『か細い藍のバラ』、絶賛恋愛中です! 私と拓斗の甘くて切なく、そして明るく暗くもある物語になっています。これからコミケ回になるので、皆さん、私の作品を買っていただけると嬉しいです!(注意、実際には買えません)無光闇無という名前で売っています。どうかみなさん、来てください。そして読んでください!!」
亜弓・撫子「それではまた!!」



今回は輪遊さんに描いていただきました!ありがとうございます!
輪遊さんのpixivページ
輪遊さんのツイッター

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12.23
 目黒と藤浪の口はすこしの間とまった。そして目黒が口を開く。
「でもさ…。撫子は本当に香織のことを嫌いにはなってないと思うよ。だって…心のどこかで嫌いだったらプールに誘っていないもの。」
「そうよね…ごめんね。私考えすぎてたかも。」
「そうそう、何事もポジティブに!」
 すると生田と磯見が帰って来た。
「ただいまー、買ってきたぞ。」
「何話していたんだ、二人とも。」
 目黒と藤浪は目を合わせてにっこりとニヤついた。
「仲間っていいなーって話だよ。ねーっ。」
「詳しいことは秘密だよーん。女の子同士のお話だもの。」
 そういって藤浪は立ち上がって磯見の座っている席に移動していった。そして目黒に声をかけた。
「ありがとう。」
 そういって藤浪はゆっくりと椅子に座った。
「みんな仲良くできてよかった。」
 撫子は飲み物をゆっくりと吸いながら言った。撫子の顔にも安心した様子が見れた。俺はそれをみてとても嬉しい気分になった。ただの嬉しい気分ではない。友情というものを感じる嬉しさだった。
「ささっ、ウォータースライダー行こう!」
「……まじで?」
「うん! さあさあ!!」
「い、生田! 磯見! 助けてくれ!」
 俺は撫子に引っ張られていった。生田と磯見に助けを呼んだが二人はニッコリと笑って手を振っていた。
「お幸せにー。」
「楽しんできてなー。」
「いやぁああああああああああ!!!」
 俺の悲鳴がプール内にこだました。


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12.23
 またいった。しかもさっきよりものすごい打球だ。弾丸ライナーなのに異常な飛距離だ。相手投手、味方スタンドも敵スタンドもこの打球にはあきれ返っていた。あれは人間ではない。そう思いたいぐらいの当たりだった。
 静まり返った球場を池之宮は悠然とゆっくりまわっている。この雰囲気はいままで感じたことがない。そのまま池之宮はゆっくりとホームを踏んだ。それと同時に相手の投手が力尽きたかのように膝をついた。
池之宮「ただいま。」
 俺たちは何も言わずに手を出した。パチンパチンと叩く音だけが聞こえてくる。池之宮って本当にすごい人だ。プロに入ってもきっと名を残せる選手になっているだろう。そんな選手が一緒のチームにいるなんて…なんと嬉しいことなのだろうか。でも未来なんてどうなるかわからない。果たしてこのままホームランを打ち続けていくのだろうか。あるいは…。
 五番の新天はショートゴロでアウト、そしてツーアウトランナー無し、六番中山先輩のところに代打が告げられた。
ウグイス嬢「六番の中山君に代わりまして、バッター、羽葉由紀。背番号、18。」
スタンド「羽葉だ! 羽葉ああああああ!!」
 由紀の名前が呼ばれた。由紀はくるくるとバットを回しながら右バッターボックスに入った。
亜弓「由紀! 頑張って!」
 私は前の試合のことを思い出して声をかけた。由紀はそれに答えるようにバットでフリフリと振った。そして初球。
 シュッ
由紀「よっと。」
 キィイン!
友亀「よし、抜ける!」
 由紀の放った打球はピッチャーの足元を抜け、セカンドとショートの間を抜けていった。センター前ヒットだ!
由紀「いぇーい!」
 由紀はガッツポーズを取った。それにあわせて私もガッツポーズを返した。

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12.22
この作品は東方の二次創作です。あらかじめご了承ください。
さとりとこいしの物語になっています。



「あつい…。」
 私は路空のいる場所に移動した。ここは妙に熱い。というか熱すぎる! 呼んで上に移動してお話ししようかしら。私は大きく体をそり、息を吸って、下に向かって響かせるために大きな声を出した。
「路空!! ちょっときて!!!」
 私の声が反響する。トンネルの中かと思うぐらいでもある。そして路空からの返事が返ってくる。
「ちょっとまっていて! 今核実験中だから!」
 なんかとんでもない言葉が帰ってきた。核実験中? もしかして、私あぶない? この状況はどうすればよいの?
「核実験ってあぶなくないの!!?」
 また私の声がこだまする。そして路空からの返事がやって来た。
「わかった! 途中で止めるから! そっちにいくよ!」
 途中で止めることがどれだけ危険なことなのかわかっているのだろうか。むしろ「核」という時点で何かあぶなげない予感がする。路空は危険…かもしれない。
「はいはいはい、どうしましたかさとりさん。」
 路空が飛んできた。この状況、第一声はどうすればよいだろう…。
「下は…大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ!」
「そ、そう…。それで、あなたに質問があって。」
「はい、なんでしょう。」
「路空は自分の友達に何か変わった所を見つけた、もしくは感じたときはどんな風に接しようと思う?」
 すると路空も考え始めた。もしかしてお燐と同じパターンになってしまうのではないのだろうか。
「うーん、私なら相手に合わせるかな…。でもそういうときってどう声かけたらよいかわからないときがあるのよね。ごめんなさい、あまり力になれなくて。」
「大丈夫よ。ありがとう。」
 私は空を見上げた。今頃こいしは何をしているのだろう。このままだと…私の身から離れていってしまうのではないだろうか…。心の中でもどかしさが生まれてくる。私はじりじりと後ろ向きに下がりながら雲の行く手を追いかけるように移動していった。そして顔を下ろすと来た道を戻るように振り返った。
「忙しい中時間貰っちゃってごめんね。それじゃあ私、そろそろ行くわ。核実験がんばってね。」
 私はゆっくりと足を踏み出した。一歩、二歩、その歩数の間にこいしは二歩、四歩とドンドン先に行ってしまうのではないのだろうか。あの子の心の問題。それは私の心の問題でもあるから…。
「さとりさん…もしかして、こいしさんのことですか?」
 私はぴたりと足を止めた。

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12.22
 バシューーーン!
 今日もいつも通り、姉とキャッチボールをしていた。ここ大会に近づくにつれて、姉の球はすごさを増すばかりであった。私も肩の調子が良くなってきて、ミットの音もよい音に近づいてきた。しかし、キャッチボール中に姉は。
真菜「…また体が開いてるわね。」
佐奈「ねえ、どんな感じなの?」
 シュバァアアアア バシューーン!!
真菜「…それぐらい自分で考えなさい。」
 真菜姉は力強い球を放って言った。痛い。ただの痛みだけじゃない。しっかりしろという気持ちもこめられた投球だった。私自身が見つける? それはどうやってやるのだろうか…。
佐奈「そういうところって自分じゃわからない部分もでてくるんじゃないのっ!」
 シュバァアアアア バシーーン!!
真菜「…自分で見つけなければ、進歩は無いわよ。」
 そういって軽々と捕球した。
真菜「…まだまだ球が軽いわね。一般的に見れば重いかもしれないけど。」
 その言葉に私はグサッと来た。私の球が軽い? そんなことはない。だって、球の勢いを殺さないようにするために毎日姉に追いつくようにランニングしてきたもの。それでも…まだ足りないというべきなのだろうか。
真菜「だから投球フォームを変えなさい。」
 シュバァアアアアアアア バシューーーーン!!!!


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12.22
「美幸、何が食べたい? 俺が買ってくるから。」
「私はフランクフルトとポテトかな。」
 生田と目黒が食べ物の会話をしている。そして藤浪たちも同じような会話をしていた。
「私はやきそばね。できれば高いものを。」
「お前、何様だよ。」
「女王様。」
「藤浪は女王様か、へー。」
 そういって磯見もご飯を買いに行った。俺と撫子はゆっくりとご飯を食べていた。撫子はちょこちょことナゲットを口に入れていた。
「あとでどれ乗りたい?」
「ウォータースライダー!」
 よ…よりによってそれか。俺はおでこをテーブルの上につけた。かなりの脱力感と疲労感が襲ってきた。
「まだまだよ! もっと遊ぼう!」
「これは…明日筋肉痛になるな…。」

「香織ちゃん、楽しい?」
「楽しいよ。」
 目黒と藤浪は二人でジュースを飲みながらくつろいでいた。俺と撫子は会話していたので何を話していたかはわからなかった。
「本当に?」
「………まぁ。ちょっとあるけどね。」
 そういって藤浪は飲み物をテーブルの上にコトンと置いた。
「やっぱり気になるのよ。以前撫子とは喧嘩しちゃったし。」
 そういって藤浪は手を震わせていた。
「あの藍い目。すっごく怖かった。今普通にみても茶色の目にしかみえないけど…。あの撫子は怖かった。きっと白羽根にはずっと藍にみえているのだと思う。だけど私に見せたものとは全く違うと思う。」
 すると目黒が肩をポンと置いてさすった。
「大丈夫だよ。きっとあの目はね、撫子の心の傷から生まれたものなのよ。私は知っているんだ。撫子がどんな人で、どんな辛い思いをしてきたのかを。それは…きっと私たちにはわかりえないほどのものだと思うの。」

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12.22
池之宮「俺の仕事がなくなるだろ。」
海鳳「じゃあどうすればいい?」
池之宮「満塁で俺に回してくれ。」
海鳳「あいよ。」
 海鳳がゆっくりとバッターボックスに入った。さっきは右打席だったけど、今度は左打席に入った。両打ちの本領発揮といったところだろうか。
富田「(くそっ、本当は敬遠したいぜ。でもそれだとコールドの点が入る。)」
田淵「(なるべく長打にならないようにしなければ…。願わくばゴロでアウトだ。)」
 海鳳がゆっくりと構える。というかものすごく力はいってるし。池之宮にチャンスで回す気全くないよ。
池之宮「あのやろう。」
 シュッ
 低めのストレートがミットに向かっていく。
 キィイイイイイイイイン!!!!
海鳳「あ。」
ベンチの皆「あーあ。」
 まるで棒読みになってしまうぐらいにあきれ返った打球だった。内野フライ。しかも超特大の。力みすぎた結果がこれだよ。
審判「インフィールドフライ!」
 うわぁ、最悪。インフィールドフライまで宣告されてしまった。セカンドがゆっくりと落下点に入る。しかし高い高い。
 パシン
 アウトー!
須賀「よし! ツーアウトだ!」
 悔しそうに海鳳がベンチに戻ってくる。
海鳳「くそっ。あーあ、満塁で池之宮にまわしちまった。」
 そういってヘルメットを置いた。
日下部「どうして満塁で渡したくなかったんだ?」
海鳳「あいつには負けられない事情がありまして…。ついでにいえばアイツ。」
 そういって海鳳はどっしりとベンチに座ってため息をついた。
海鳳「アイツ、満塁とかの場面になると異様に打つんですよ。」
府中「異様に?」
 ギィイイイイイイイイイイイイイイン
皆「うわーーーーーーー。」

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12.22
「あれ・・・は」

 俺はその生き物を見て目を見開いた。
その巨大な生き物がただの”動物”なんかじゃないことは一目見ればわかる。
男三人に捕らえられ、ぐったりとしているその巨大な爪と牙をもつ生き物は俺達の村を襲ったものに酷似していた。

「怪物・・・・。」

 オリヒメにまたがったまま俺と同じように呆然とするカリーネがぽつりと呟いた。
カリーネも俺と同じように昔村を襲った生き物とこの生き物が同じ怪物であることを理解したらしく、青い瞳をめいっぱい見開いて食い入るようにそれを見つめていた。

 しばらくざわつく人の群れに紛れながらその生き物が運ばれていく様子をカリーネと共に動けずに見つめていたのだが、運ばれるそれが自分の後ろを通り過ぎていったところでようやく金縛りがとけたように身体を動かす事ができるようになった。
あの事件があったのは随分昔のことだが、やはり心の奥底どこかで、恐れと怨みに近い怒りが眠っているらしかった。

「・・・・。」

 それはカリーネも同じことで、カリーネは通り過ぎていく怪物を目で追うこともせずにオリヒメに跨ったまま虚空を睨みつけていた。

「カリーネ。・・・おい、カリーネ大丈夫か?」

 俺は馬から下りながら、カリーネにそう声をかける。
しばらく反応がなかったが、2,3度呼びかけるとカリーネは俺の声にようやくはっとしてぎこちない動きでこちらを見た。
それからぱちぱちと数回目を瞬かせ、馬から下りて、こくんと頷く。
 怪物は、今あちこちで数を増やしているという話はよくきく。
だが、実際はなかなか目にすることはなくて、こうして怪物を見ることはあの時以来だったのだ。ショックを受けていても、無理はない。

「大丈夫だ、あいつはもう死んでただろ。それに今のでわかった。この町にいれば怪物の事を知る手立ては絶対あるって。」

 俺が少し気遣うように言うと、カリーネはじろりとこちらを睨みオリヒメを引きながら歩き出した。

「別に怖がってるわけじゃないわよ。ちょっとびっくりしただけ。それより早く宿を探そうよ。もうここ数日馬の上で硬いパンをかじってばっかりでうんざり!早く温かいご飯が食べたい!」

 カリーネはすっかりいつもの様子に戻ってぶうぶう言いながら先立って歩いていく。
俺はほっとため息をついてそのあとを追った。



「ここがよさそうだな」

 しばらく歩いたところで、あまり高くない宿を発見して、俺はそう呟いた。
馬ももちろん置いてくれるようだし、問題ないだろうとカリーネも納得して頷いた。
・・・そんな時、ふと宿屋の壁に貼り付けられている一枚の紙が目に飛び込んできた。

 ”探し人、お仕事のお手伝い、なんでもお受け致します。”

 それは、そんな文字を始めとするギルド紹介用の貼り紙だった。



本日の文章は凍雲銀狼さんが書きました。
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12.22
亜弓「由紀、何で止めたの?」
由紀「館川がマウンドに行ってから説明する。」
 私は何が何だかわからなかった。なぜせっかくのチャンスをつぶしてまでも館川に無理させなかったのだろう。
友亀「館川、アレでいい。」
館川「そっか。後はピッチングだけ集中するよ。」
 そういって館川と友亀がベンチから出ていった。そして由紀が私の近くによってきた。その様子は何かわくわくしているかのようだった。
由紀「ここまでの投球見ていてわからない?」
亜弓「たしかにヒット一本も打たれてないけど…。えっ?」
由紀「もしここですべっていたら、投球に影響がでるかもしれない。ましてや今日はとてつもなく絶好調。この点差だとあと一点取れば7回のコールドになるかもしれないけど…完全試合ができるかもしれない。」
亜弓「か、完全試合?」
 私は半信半疑になりながら館川のピッチングを見守ることにした。それにしてもここまでワクワクする由紀を見るのは久々だ。あの時以来だろうか。私が始めて公式戦で先発したときの…。
 …………
 私は6回を過ぎてわくわくがとまらない現象に陥っていた。ここまで館川は6回ノーヒット。ファーボールなし、エラーなし。6奪三振のすばらしい投球を見せてくれている。そう、由紀の言ったとおり、完全試合が達成されるかもしれない。相手投手は五回から投手と一塁手が交代していた。それ以降はヒットがでなかった。そして七回の攻撃、館川がファーボールで出塁し友亀がヒット。続く卜部先輩がサードライナーでアウト。二番の府中先輩がヒットで出塁した。そしてワンアウト満塁で海鳳に回ってきた。

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12.21
 ストライクバッターアウト!
佐奈「やったああああ!!!」
堀近「よっしゃあああ!!」
 最後は椎葉佐奈投手が三振に抑えて試合終了とし、神宮大会の切符を手に入れました。この試合では━━━━━━━━━。
 …………
真菜「…佐奈、喜びすぎよ。」
佐奈「ちょっと自分でみて恥ずかしくなってきたよ。」
 私と真菜姉はリビングで六大学リーグの優勝試合ハイライトを見ていた。4安打無失点の好投で勝つことができた決勝は1対0というやはり打力不足に泣かれた試合だった。でも、ヒットだけは6本といままでの試合の中で一番よかった結果だった。
真菜「…すこしはまとまってきたわね。」
佐奈「これであとは真菜姉を倒すだけ。」
真菜「…このままじゃボロ負けするわよ。」
佐奈「何言ってるの? 私はこの一年間で成長したんだから。チームもよくなってきたんだから。」
真菜「そうね…。でもあなたの投げ方、あのままじゃ他の学校に点取られるわよ。」
佐奈「えっ?」
 私は箸を止めた。一体どういうことなのだろう。
真菜「…体すぐに開きすぎよ。いくら球が速くても、威力があってもこれじゃあ勿体ない。今からでも投球フォームを改造してみることね。」
佐奈「フォーム改造?」
真菜「そう……。ご馳走様。」
 真菜姉は食べ終えてすぐに食器を洗い始めた。投球フォームを変える? どういうことなの? 体が開きすぎ? いままでそんな自覚なんてなかった。本当にそうなのだろうか…。

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12.21
 ギィイイイイン!!!
 キイイイイン!
 その後、松江学園の攻撃は止まらなかった。五番の新天がソロホームランを打って5点目。六番の中山先輩、七番の栗山先輩、八番の館川が連続ヒット。そして九番の友亀がスクイズを決めて6点目。ワンアウト二塁三塁となって一番の卜部先輩に戻ってきた。
卜部「(サインは…スクイズか。ここは確実に決めてまずコールドの条件を作ろう。)」
成見「(くそ…なんでこんなに打たれるんだよ。おまけに暑いし、もう投手交代してくれよ。)」
田淵「(くそっ、どうやってこの流れを断ち切れば…。)」
富田「(先輩の俺たちが止めないでどうするんだ。)」
中本「(俺たちが流れを変えてやらなければ。)」
 ピッチャーがセットポジションに入る。足を上げると同時にサードランナーが走る。またスクイズだ!
成見「(くそっ!)」
 シュッ
田淵「(やばい、スクイズやりやすい球にっ!)」
卜部「(ここだ!)」
 コツン
 綺麗なバントを決めた…えっ!?
富田「うらああああ!」
 ファーストが全力疾走で突っ込んできた。しかも事前にわかっていたかのような判断だ。サードランナーの栗山先輩も良いダッシュだ。でもきわどい!
富田「田淵!」
 バスッ
 グラブトスだ。これなら持ち返る時間が短縮される。まずい。
 パスン
田淵「アウトぉ!」
審判「アウト!!」
 ああ、アウトになってしまった。惜しかったのに…。
田淵「サード!」
 シュッ
 えっ? ってセカンドランナーだった館川が飛び出している! まずい、これははさまれる!
由紀「滑るな! 無理に生き残らなくても大丈夫!」
亜弓「えっ!?」
 その指示の通りに、館川はすぐにタッチをされた。これでダブルプレーをとられ、スリーアウトチェンジになった。

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12.21
「あーーー死ぬ。」
「なんであんな滑り台5回もやったんだろう。」
「酔った…。」
 俺たち三人とも、何度も巨大ウォータースライダーに乗って酔ってしまった。ベンチでぐでーんと倒れている。女子たちは一回でこりたようで、流れるプールにいた。そして藤浪が出てるところが見えた。プールから出るとそのまま座っていた。そういえば撫子と目黒の姿が見当たらない。どこいったんだ?
「Take。」
「What!?」
 目黒が藤浪のホッペタに飲み物を押し付けた。おそらく冷たかったのだろう、藤浪はビクンと体を動かして驚いていた。しかしなんで英語で喋ってるんだ? ノリがとてもよいな。意外とあの二人は仲が良いのか?
 ザパーン
 潜水していた撫子が出てきた。そして水の浅いところに移動してきた。
「拓斗…疲れた。ご飯たべよ。」
水着挿絵ラフ20131215-完成003a
 テレながらの姿はとても輝いて可愛かった。顔についている髪を右手でどかしながら水を払っている。今日の目黒の目は藍色ですごく楽しそうな目だった。そして水しぶきが丁度よい具合になって撫子を照らしている。これは絵になる。しかもめっちゃ可愛い。可愛いの言葉がドンドンでてくる。
「拓斗?」
 俺はぼーっとしていた。俺はわれに返り、返答した。
「ああ、俺も滑りすぎて疲れ果てたところだ。何か食べるか。」
 俺はポケットからお金を出してお店のところに移動した。撫子の髪は太陽の光で輝いていた。
「ごちになりますー。」
「私にも一つたのむー。」
「ちょっとまて、お前らは彼氏に奢ってもらいなよ。」
 後ろからはジュースを持った目黒と藤浪がいた。しかもお前ら飲み物持ってるんだったらけっこう十分だろ。あと食い物を買ってもらえば。
「撫子、いる?」
「ありがとう美幸。」
 目黒が二つ目の飲み物を撫子に渡した。
「俺には?」
「ないよ。」
 そして俺の分はナシと。悲しいな。
「俺にはあるよな。」
「何言ってるの?」
 おいおい、生田までないのか。しかもガックシポーズとってるし…。かわいそうに。



今回の挿絵は輪遊さんに描いていただきました!ありがとうございます!
輪遊さんのpixivページ
輪遊さんのツイッター

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12.21
海鳳「っしゃあ!」
 海鳳が腕を突き上げて喜ぶ。スタンドもそれにあわせて声を上げる。チームと応援の人が一体となっている。いつみても、いつ思ってもこんなことは嬉しい。そして次は四番の池之宮。ここで一発が出れば大きくリードを広げることができる。
池之宮「(サインは…自由に打てか。ならまかせろ。)」
 池之宮はどっしりとした構えをした。ビリビリと威圧感が伝わる。相手投手もかなり緊張しているようすだ。
田淵「(こいつ…普通じゃねぇ。いままでの成績から見ても一年の成績とは思えない…。敬遠も策だが…。)」
成見「(いや、勝負してぇ。)」
田淵「(だろうな。監督からは…敬遠の指示は無しか。どうなってもしらないぜ…。おれは勝ちたいんだよ。)」
成見「(まかせろって…。さっきのバッターだってまぐれだ。たまたま振ったところがあの場所に飛んでいっただけの話だ。一年なんかに簡単に打たれてたまるかよ!)」
 シュッ!
亜弓「あっ。」
 私は声をだした。それは池之宮にとって絶好球となる高目がきたからだった。
池之宮「焦ったな。」
 ギィイイイイイン!!
成見「嘘だろ?」
スタンド「うわあぁあああ。」
 完全にスタンドの人たちもあきれてしまうほどの当たりだった。打球はセンター方向にグングン伸びていく。センターはもう追わない。そして…。
 スッ
スタンド「おおおおおお!!」
中山「まじかよ!」
新天「あれ、本当に人間ですか?」
 打球はセンターのバックスクリーンを越えて場外に消えていった。さすが評判に恥じない活躍、そして規格外の強さ。これが全国大会準優勝したチームの四番というわけか。恐ろしい。ゆっくりと池之宮が戻ってくる。海鳳がホームインして池之宮を待っているかと思いきや。
海鳳「恵美さーん! 俺のヒット見ましたか!!」
 あ、恵美先輩にむけての愛の言葉だったか。その間にも池之宮はゆっくりとホームに帰っていく。
池之宮「試合中だぞ。」
 池之宮はゆっくりとホームを踏んで海鳳とハイタッチした。
海鳳「だって可愛いんだもん。」
池之宮「お前絶対ろくなこと無いぞ。」
 2点追加で4対0。また突き放していった。

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12.21
海鳳「よっしゃ!」
 海鳳はゆっくりとバッターボックスに入った。そしてピッチャーを観察するかのように見る。その表情は打つ気マンマンだ。ゆっくりとかまえると相手投手は身震いをしたかのような動作を見せた。
成見「(うっひょー、こういう相手と戦いたかったんだよな。楽しみだぜ。)」
田淵「(慎重にいけよ。)」
 相手投手はゆっくりとセットポジションにつく。そして高く足を上げた。
 ダッ
 当然のごとく一塁ランナーの府中先輩は盗塁する。しかし投手はお構いなしといった表情だ。
成見「よいしょ!」
 シューーーー バシン!
 ボールワン。
 きわどいところにストレートが決まる。このコントロールの荒っぽさも打たれにくい一つの理由でもある。ただ、これは失投にもつながってくる。下手なところに投げれば海鳳ならドカンだ。
 ググググッ バスン
 ストライクワン!
 今度はゆったりとしたカーブがストライクゾーンに決まる。海鳳はボールの球筋をしっかり見ていた。そして三球目…。
成見「っらああ!」
 シュッ
海鳳「来たっ!」
 ザッ
 海鳳が大きく踏み込んだ。そしてバットをボールに合わせるように振っていく。
 キィィイイイイイン!!
米倉「よっしゃ!」
新天「先輩、ゆっくり帰れます!」
 打球はグングンと伸びていく。レフトとセンターが追いかけるがその間を軽々と越えていった。
 ポーン
府中「よくやった!」
 そういいながら卜部先輩と府中先輩がホームに帰って来た。
卜部「よっしゃ府中。」
府中「ああ、流れを持っていけたぞ。」
 そのまま海鳳はセカンドベースまでたどり着いた。先取点を取って2対0とした。

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12.19
 試合が終わると私たちは荷物を持って球場を後にした。そして控え室に移動するとすぐにミーティングが始まった。
堀近「まず試合の内容だ。勝てたには勝てた。しかし皆力みすぎだ。イケイケムードになるのはわかるが…野本。このチームの打撃鉄則はなんだ?」
野本「落ち着いて、一つずつしっかり決めていくことです。」
堀近「そうだ。今日の試合は落ち着いていけたか?」
野本「…できませんでした。」
堀近「坂本、お前サイン間違えただろ? 落ち着いて判断してたか?」
坂本「いえ、打とう打とうと考えていました。」
 反省会だ。私はチームの状況がどのようなのかをしっかり聞いていった。そして私は姉の言っていたことが嘘ではなく、真実だということがわかった。それを知って私は悲しい気持ちになった。それと同時に悔しさもだ。あんなにボロクソ言われたら…悔しくて悔しくてたまらない。どうしても姉に勝ちたい…姉にかって見返してやりたい。そして元の姉に…。
堀近「椎葉、お前は自分のあることだけを気持ちに決め付けながらプレーしていないか?」
 図星だった。私はこの試合に勝つことはとっくに決め付けていたことだった。試合はいつどうなるかなんてわからない。目の前の試合を考えない人に勝利なんてものから遠ざかっていくだけだった。
佐奈「すみません…。そのせいで今日の試合、途中で連打を浴びてしまいました。心の問題です。」
堀近「お前の気持ちはよくわかる。それに姉妹なのはよくわかる。でも今はこっちのチームメイトだ。そんな一人勝手な都合に振り回されたくないんだ、俺たちも。」
 他のチームメイトが私を見てくる。本当に申し訳なかった。そして姉の言っていたことにもう一つの意味があることに気づいた。いまさらになっては遅いことだったかもしれない。自分も同じ立場にあるということを教えてくれていたのだ。だから周りを見て今の自分の気持ちもわかって欲しいということだったのだろう。
堀近「まあ、悔しい気持ちはわかる。俺だってそうだ。でもその気持ちがあるのなら、姉と戦うときにその気持ちを精一杯ぶつけたらどうだ?」
佐奈「そうですね…。」
 私は下を向いた。皆に見せられる顔なんてないと思ったからだ。
橘田「でも今日のピッチングはすごかったぞ。」
高坂「俺たちにはできないことだからな。羨ましいぜ。」
 皆は私を優しく支えてくれた。私は顔をあげた。そこには大丈夫だよと顔で教えてくれているようだった。このチームで勝ち抜いていくことを心に誓った。

line-s
12.19
「のーんびーりー。」
 目黒はプカプカと浮き輪をかぶって流れに身を任せていた。なんともほのぼのした感じなんだろう。
「美幸ちゃん泳がないの?」
「私は泳げないー。」
 撫子が水中から出てきて髪の水を首を振ってはらった。撫子の縛っていない髪は綺麗に輝いていた。
「なーでしこ!」
 バシャァ!
「きゃっ!」
 藤浪が撫子に水をかける。
「やったね!!」
 水かけっこがはじまった。その光景をのんびりぷかぷかと目黒が見つめていた。そして俺たちはというと…。
「おい拓斗、学。いいか、押すなよ。絶対に押すなよ。」
「完全にフラグじゃねえか。」
 ポンッ
「ためらいないなおい! うわああああああああ!!!!」
 生田がポンと磯見の背中を押し、ウォータースライダーの中にすっ飛んでいった。この急傾斜滑り台からトンネルになっており、先が見えない怖さが体感できるウォータースライダーだ。そして最後にはジャンプが待っている。なんつう怖いスライダーなんだ。
「生田、先どうぞ。」
「いやいや、白羽根お前がいけ。」
 俺たちは譲り合っていた。しかし並んでいる順序として生田が先にいくことになった。
「ぎゃあああああ!!」
 バッシャアアアアン!
 すでにそのころには下で磯見が飛んでいた。そしてものすごい勢いで水の中へとダイブしていった。それを見た俺と生田はぞっとした。
「や、やっぱ止めようぜ。」
「断る。」
 ポン
「ふざけんなよ、おいぃぃぃいいいいいいい!!!!」
 生田の悲鳴がトンネルの中でこだました。さて、俺はここから帰りますか。と思ったら隣の係員のおじさんがにっこりと笑った。
 ザッパアアアア!
 あ、生田が到着していた。これはまずい、逃げられない。
「二人のかわりにおじさんがおしてあげるよ。」
「えっ!? ちょっ!?」
 係員のおじさんは俺の背中をチョンと押した。そして重力が無くなるかと思うぐらいの急な斜面を滑っていった。
「んなばかなぁあああああああああ!!!!」
 目の前が真っ暗だ。途中で上が透明になってどの位置かがわかる。しかしすぐに真っ暗になってまた斜面が続く。俺の体がぐわんぐわんと動いていく。そして光が見えた。もしやこれってジャンプ!?
 シューーーー バシャアアアアアン!
「ざまあないぜ。」
「かわいそうに。」
 俺はダイブしたあと顔をあげてすぐに水から上がった。なんつう怖いスライダーなんだ。
「いやああああああ!!」
 今度は別のところから女性の悲鳴か…。いったいどんなアトラクション…。
「おい、あいつら三人とも何乗ってるんだ!?」
 生田が指をさす。その方向にはゴムボートに乗るウォータースライダーがあり、その中には撫子、目黒、藤浪がいた。
「ぎゃあああああ、たすけてえええええ!!」
 あのすさまじい悲鳴は目黒か。思いっきり藤浪に抱きついている。その藤浪も怖さで顔が恐ろしいことになっている。
「ばかっ、抱きつくなバランス崩れる。うわああああああ!!」
 今度は藤浪まで叫び始めた。あれ? 撫子は怖くないのか? 先頭でなにやらバランスを調整しているように見えるが…。
「…………。」
 なにこれ、俺の彼女ってもしかして勇者? おそろしく無言なままゴムボートのバランスを整えている。俺たちはその光景をみて唖然としていた。

line-s
12.19
 ノーアウトランナー一塁。ここでバッターは府中先輩に回った。キャプテンなら確実に点を取りにいってくれるだろう。でも監督からのサインはどうなるのだろうか。
日下部「(ここはバントだ。だが、お前も生きるようなバントだ。そして卜部、走れ。)」
卜部「(ずいぶんと攻撃的だな。よっしゃ!)」
府中「(勝つための野球、それが俺のやり方だ。)」
 ピッチャーがセットポジションに入る。ランナーを少し気にしながら構える。
 ザッ
沖田「ゴォ!!」
 ダッ!
 卜部先輩が走った。しかもピッチャーは足を高く上げている。この投げ方しかできないのだろうか。だとしたら…。
成見「かまわねぇ!」
 シュッ! シュゴーー
府中「(そうくるか。なら!)」
 スッ
 えっ!? 府中先輩がバント?
 コツン。
田淵「セカンド間に合わない! 一つとりに行け!」
成見「ちぃ。」
 ピッチャーがボールの処理に入る。しかし府中先輩も早い。全力で走っている。
成見「ファーストッ!」
田淵「投げるな!」
 しかしその反応には対応できずにファーストに投げる。タイミングはきわどそうだ。そしてファーストランナーだった卜部先輩がセカンドベースを踏んでサードベースに向かっていた。
 バシン!
 セーフ!
 しかも運良く、府中先輩はセーフになった。
富田「サード!」
 ファーストがサードに向かって投げる。しかし卜部先輩の足は速く、余裕でサードベースに到達した。
府中「ナイス卜部!」
卜部「ナイバント! キャプテン!」
 二人の息はピッタリだった。そしてここで三番の海鳳に回ってきた。

line-s
12.19
 …………。
 両チームとも三回を終えてヒットは一本も無かった。投手がそれだけ良いということだろう。試合が動き始めたのは四回の表からだった。ノーアウト、先頭バッターは卜部先輩だ。
 シューーーバシン!
 ストライクワン!
卜部「(さっきはこの球を強引に振りに行ったからダメだったんだ。ミートに徹底して、確実に塁にでるんだ!)」
 シューー
 ガキィン!
 なかなか良い当たりだったが、レフトのファールゾーンへ。ツーストライクツーボールになった。当てることは出来ているがどうもフェアゾーンに入らない。どうやって攻めていくのだろうか。
 シューーー ギィン!
 ファールボール!
 今度は後ろにボールが飛んでいった。タイミングを合わせると打球位置がずれる。難しいストレートだ。
日下部「(ここは勝負だ。)」
卜部「(うっひょー、すんげぇ賭けだなそりゃ。わかったぜ監督、決めてみせるぜ。)」
 ピッチャーが足を上げて投げた。
 ビシュッ シューーー
 スッ
中本「なっ!?」
富田「まじか!」
 コツン。
 卜部先輩がセーフティーバントを仕掛けた。しかもスリーバント失敗となる状況で。しかし打球は綺麗にサードの方面へと転がっていく。投手もこれにはあわててとりに行こうとするが、時すでに遅し。卜部先輩は一塁ベースを強く踏んで駆け抜けた。
 セーフ!
卜部「っし!」
海鳳「ナイス卜部先輩!」
 見事にバントが決まって初のランナーが出た。これは大きなチャンスになりそうだ。
綾「ナイス!! 皆いくよ!」
優衣「私たちもやるよ!」
 ピッピッピー
 チアリーディング部が吹奏楽の音楽に合わせて踊る。それに負けじと優衣たちのスノーフェアリーも踊る。その姿はとても綺麗で、さらに太陽の光がその美しさを際立てていた。
阿湖音「あれは一体どんな魔法を使ったのだ? あの速さは人間ではないぞ。」
美琴「いや、あれは普通にスポーツだから魔法なんてないよ。それに人間よ。」

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12.19
 ブシィ! バシーン! ストライクツー!
谷村「(くそっ、どうやってこの球を打てって言うんだよ。)」
 本当にすごかった。館川のピッチングには何か闘志をむき出しにして戦っている人のようだった。それは相手にものすごいプレッシャーを与え、良いピッチングを引き出してもいた。
 ブン! バシーン! ストライクバッターアウト!
館川「おっしゃ!」
友亀「ナイス館川!」
 また三振、これでツーアウト。もし館川が敵のチームだったとしたら…私たちは勝てたのだろうか…。いや、いくら私たちの打撃力があったとしても今日の館川には手も足もでないだろう。本当に味方でよかった。その姿は今一番戦いたくない相手と思わせるほどだった。
浜本「せめて当てることぐらいしなきゃな。」
 次は三番の浜本が左バッターボックスに入った。バットはねかせて構えている。ゆったりとしたフォームだ。館川はそれがどうしたと言わんばかりに強気の投球をした。
 シューーーー
浜本「(ここだ、振れ!)」
 ギィン!
浜本「ちっ。」
 打球はファーストにボテボテのゴロ、池之宮はゆっくりと捕球体勢に入ってしっかりととる。そして自分でベースを踏んだ。
 アウト!!
卜部「ナイス池之宮!」
栗山「ピッチャーいいね!」
 三者凡退で切ることができた。今日の館川は一味違った。まるで別人だ。
日下部「よし、ナイスピッチング館川。この調子でいこう。」
館川「はいっ!」
 館川はゆっくりとベンチに座った。そして私のほうを向いて言った。
館川「どうだ、俺のピッチングは。」
亜弓「うん、すごいよ。今日なら誰にも打たれない気がする。」
館川「そうか、ありがとな。」
 そういって館川は飲み物を取りに行った。

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12.18
「早くプールに入りたいなぁ。」
「その前に準備体操しなきゃね。」
「準備体操ってあなたたち子供?」
 撫子たちが準備体操を始める。俺たちもその姿をまじまじと見ながら運動を始めた。み、水着姿が…体のボディーラインとかが…美しく…弧を描いて。
「おい拓斗、鼻血。」
「うぇえ!? まじだ。」
「だれかティッシュティッシュ!」
 俺はなぜか鼻血がでていた。な、撫子の体を見てだろうか。いかんいかん、なんてけしからんことを考えているんだ俺は。彼女が目の前にいるんだ。しかもプールだ! そういうときこそ、普段どおりやって、もっと楽しむというのが普通の健全な男子のやることじゃないか!
「あ、とまった。」
「はやっ!」
 俺はすぐに鼻血がとまった。これは撫子のおかげだろうか…俺の意思の問題だったのだろうか。
「撫子ちゃん、彼氏が鼻血だしてたよ。」
「もう、むっつりスケベなんだから。」
 目黒と撫子がため息をつくようにこちらを見つめる。そして完全にあきれ返っていた藤浪はせっせと運動していた。
「最初はどうする? ペア同士で楽しむか? それとも男子は男子、女子は女子にする?」
 俺は撫子たちのところに言って聞いてきた。
「私は午前中女子同士で遊びたいな。いいかな?」
「ああ、かまわないよ。」
 そういって撫子たちはパタパタと歩いて流れるプールに向かっていった。
「なあ、俺たちってなんのためにプールに来たのだろう。」
「そりゃお前、彼女の水着みるためだろ。」
 後ろでは遠い目になっていた生田と磯見が立ち尽くしていた。男だけのプールってのもなんか…楽しい気もするが、彼女も連れてだと…うん。なんだか俺も悲しくなってきた。

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